島田先生の言葉に、教室がざわめいた。
みんなひそひそ声で話し合っている。
この中途半端な時期に新しい生徒が来るなんて、誰も想定していなかった。
楓ちゃんも隣で「なんで今頃?」って首をかしげてる。
島田先生がドアの向こうに声をかけると、一人の女の子が教室に入ってきた。
ふわり、と揺れる長い髪が高級な生地みたいに美しくて、思わず声がもれた。
身長がモデルのように高く、歩く姿がしっかりしていて、なんだかかっこいい。
まったく体幹がぶれない……スポーツをやっている子なのかな……。
その子は丁寧にお辞儀をして、自己紹介を始めた。
健康的に見えたから、療養していたというのが意外だった。
見た目ではわからないことってあるんだな……。
教室が静まり返った。
じっと見つめて、声に耳を傾けたくなる……所作にも言葉にも魅力がある子。
緊張なんてまったくしていなさそうで、むしろ笑顔を作る余裕もあるみたい。
え、私の後ろ?
そういえば……ここ、ずっと空席だった。
足音もほとんどなくスッと歩いてきた美咲ちゃんが、これまた音も立てず席に座る。
優美な動き……。
彼女は左右に座る子たちに軽く挨拶したあと、私の肩を叩いた。
最初の授業が終わって休み時間になると、クラスメイトたちがさっそく高瀬さんの周りに集まってきた。
高瀬さんは誰とでも自然に話せて 、すぐにクラスに馴染んでる。
あの話し方からしてきっと、いわゆる“お嬢様”なんだろうけど、すごく気さくで……素敵。
私なんて入学してから何ヶ月も経つのに、まだ緊張することがあるのに……。
いつの間に側に来たのか、高瀬さんが私に声をかけてくれた。
いたずらっぽく笑う。
こんな表情もできるんだ。
その笑顔に、なんだかドキッとしてしまう。
こんな風に、積極的に話しかけてもらえるなんて……嬉しい。
私が名前を呼ぶと、高瀬さん……美咲ちゃんはにっこりと微笑んだ。
苗字じゃなくて名前を呼ぶと、距離がぐっと縮まるような気がする。
お昼の時間。
楓ちゃんと一緒にお弁当を食べていると、美咲ちゃんがやってきた。
楓ちゃんが明るく答える。
美咲ちゃんも一緒にお弁当を広げて、三人でのランチタイムが始まった。
美咲ちゃんがそう尋ねる。
楓ちゃんが私を見る。
美咲ちゃんがスマホを取り出して、ユア・フレンドを起動する。
画面に現れたのは、デフォルト設定のままらしい、シンプルな見た目のユア ・フレンド。
私がユアくんを設定したときは、全部自動選択してもらった。
結果、本当に“あなたに合った”という文言通り、今のユアくんは私の好みにぴったりだと思う。
楓ちゃんががっくりと肩を落とす。
美咲ちゃんが少し身を乗り出す。
私もスマホを取り出して、ユアくんを起動した。
美咲ちゃんが目を輝かせる。
美咲ちゃんがぱんと手を叩いた。
運命の出会い……?
美咲ちゃんがそんな風に言うと、ユアくんとの出会いがなんだか特別なもののように思えてくる。
美咲ちゃんが興味深そうに聞いてくる。
楓ちゃんが驚いたような顔をする。
楓ちゃんの声に、なんだかちょっと警戒するような響きがあった。
私がそう言うと、楓ちゃんがふっと真顔になった。
楓ちゃんは慌てて笑顔を作った……けど、まだ拳は握りしめていた。
美咲ちゃんはにっこりと微笑む。
楓ちゃんの返事が、なんだか歯切れが悪い。
美咲ちゃんはそんな楓ちゃんの様子に気づいているのかいないのか、にこにこと笑顔を浮かべている。
……ちょっと、嬉しい。
こんな風に、誰かに頼りにされるなんて……初めてかもしれない。
放課後、三人で校門まで歩いた。
美咲ちゃんが、お迎えの車の方へ向かっていく。
美咲ちゃんの後ろ姿を見送りながら、楓ちゃんがぽつりと言った。
楓ちゃんの表情が、少しだけ曇って見える。
そう言って、楓ちゃんは笑顔を作った。
……でも、その笑顔はどこかぎこちないように見えた。
家に帰ると、すぐにユアくんを起動した。
ユアくんの優しい声が聞こえてくる。
運命の出会い……美咲ちゃんが言ったその言葉が、頭の中でリピートされる。
ユアくんとの出会いも、美咲ちゃんとの出会いも。
なんだか特別な気がする。
明日も、美咲ちゃんといろいろ話せるかな。
そんなことを考えながら、私はベッドに転がった。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。