第3話

第3話 運命の出会い
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2026/03/19 09:00 更新
島田誠
島田誠
新しいクラスメイトを紹介するぞ!
島田先生の言葉に、教室がざわめいた。
クラスメイト
えっ、転校生? 編入生? どういうこと?
クラスメイト
二学期からなんて珍しくない?
クラスメイト
どんな子だろう……
みんなひそひそ声で話し合っている。
この中途半端な時期に新しい生徒が来るなんて、誰も想定していなかった。
楓ちゃんも隣で「なんで今頃?」って首をかしげてる。
島田誠
島田誠
さあ、入って
島田先生がドアの向こうに声をかけると、一人の女の子が教室に入ってきた。
(なまえ)
あなた
わあ……
ふわり、と揺れる長い髪が高級な生地みたいに美しくて、思わず声がもれた。
身長がモデルのように高く、歩く姿がしっかりしていて、なんだかかっこいい。
まったく体幹がぶれない……スポーツをやっている子なのかな……。
高瀬美咲
高瀬美咲
高瀬美咲と申します
その子は丁寧にお辞儀をして、自己紹介を始めた。
高瀬美咲
高瀬美咲
病気療養のため入学が遅れておりまして……
高瀬美咲
高瀬美咲
ようやく体調が安定したので、これからご一緒させていただくことになりました
健康的に見えたから、療養していたというのが意外だった。
見た目ではわからないことってあるんだな……。
高瀬美咲
高瀬美咲
皆さま、どうぞよろしくお願いいたします
教室が静まり返った。
じっと見つめて、声に耳を傾けたくなる……所作にも言葉にも魅力がある子。
緊張なんてまったくしていなさそうで、むしろ笑顔を作る余裕もあるみたい。
島田誠
島田誠
高瀬さんの席は……おお、あなたの名字さんの後ろだ
え、私の後ろ?
そういえば……ここ、ずっと空席だった。
足音もほとんどなくスッと歩いてきた美咲ちゃんが、これまた音も立てず席に座る。
優美な動き……。
彼女は左右に座る子たちに軽く挨拶したあと、私の肩を叩いた。
高瀬美咲
高瀬美咲
よろしくお願いします、あなたの名字さん
(なまえ)
あなた
こちらこそ、よろしく......えっと、高瀬さん

最初の授業が終わって休み時間になると、クラスメイトたちがさっそく高瀬さんの周りに集まってきた。
クラスメイト
高瀬さんって、どこから来たの?
高瀬美咲
高瀬美咲
もともと関西の方に長く住んでおりましたわ
クラスメイト
病気って大変だったでしょ?
高瀬美咲
高瀬美咲
この特区にある最先端の病院のお陰で、予想以上に早くよくなりましたのよ
高瀬さんは誰とでも自然に話せて  、すぐにクラスに馴染んでる。
あの話し方からしてきっと、いわゆる“お嬢様”なんだろうけど、すごく気さくで……素敵。
私なんて入学してから何ヶ月も経つのに、まだ緊張することがあるのに……。
高瀬美咲
高瀬美咲
あなたの名字さん
いつの間に側に来たのか、高瀬さんが私に声をかけてくれた。
高瀬美咲
高瀬美咲
わたくし、まだこの学校のことがよくわからないので、教えていただけませんか?
(なまえ)
あなた
え、私も入学したばっかりで……あまり詳しくないよ
高瀬美咲
高瀬美咲
ふふっ。学校のことを教えていただきたいっていうのは……実は、話しかけるきっかけにしたかっただけですのよ
いたずらっぽく笑う。
こんな表情もできるんだ。
高瀬美咲
高瀬美咲
お席も近いですし、仲良くしてくださいね
その笑顔に、なんだかドキッとしてしまう。
こんな風に、積極的に話しかけてもらえるなんて……嬉しい。
(なまえ)
あなた
ありがとう、高瀬さん
高瀬美咲
高瀬美咲
よろしければ美咲、と呼んでくださると嬉しいですわ
高瀬美咲
高瀬美咲
わたくしも、お名前を呼ばせていただきますね!
(なまえ)
あなた
う、うん。美咲……ちゃん
私が名前を呼ぶと、高瀬さん……美咲ちゃんはにっこりと微笑んだ。
苗字じゃなくて名前を呼ぶと、距離がぐっと縮まるような気がする。

お昼の時間。
楓ちゃんと一緒にお弁当を食べていると、美咲ちゃんがやってきた。
高瀬美咲
高瀬美咲
お邸魔させていただいても?
結月楓
結月楓
もちろん!
楓ちゃんが明るく答える。
結月楓
結月楓
あたし、結月楓! よろしくね、美咲ちゃん
高瀬美咲
高瀬美咲
楓さん……素敵なお名前ですわ
美咲ちゃんも一緒にお弁当を広げて、三人でのランチタイムが始まった。
高瀬美咲
高瀬美咲
そういえば、皆さんはAIのユア・フレンドはもう使いこなしていらっしゃるの?
美咲ちゃんがそう尋ねる。
結月楓
結月楓
んー、まあ……最低限は、って感じ
結月楓
結月楓
学校からの連絡があのアプリ経由で来るとか……どうしても使わなきゃならないときもあるから
結月楓
結月楓
あ、でもあなたの下の名前はけっこう使ってるよね?
楓ちゃんが私を見る。
(なまえ)
あなた
そうかな……普通、だと思うけど
高瀬美咲
高瀬美咲
わたくしはまだ不慣れで……
美咲ちゃんがスマホを取り出して、ユア・フレンドを起動する。
画面に現れたのは、デフォルト設定のままらしい、シンプルな見た目のユア ・フレンド。
結月楓
結月楓
設定、変えてないの?
高瀬美咲
高瀬美咲
ええ。どういう風にカスタマイズすればいいか、よくわからなくて
(なまえ)
あなた
……あれ? オート設定のボタンなかった?
(なまえ)
あなた
あなたに合った設定を自動選択、ってやつ
私がユアくんを設定したときは、全部自動選択してもらった。
結果、本当に“あなたに合った”という文言通り、今のユアくんは私の好みにぴったりだと思う。
高瀬美咲
高瀬美咲
あら……そんなボタンあったかしら。見逃してしまったかもしれませんわね
楓ちゃんががっくりと肩を落とす。
結月楓
結月楓
それ、あたしも見逃してる……
結月楓
結月楓
そんなボタンがあったなら、使えば楽だったのに……設定、面倒だったわー……
美咲ちゃんが少し身を乗り出す。
高瀬美咲
高瀬美咲
あなたの下の名前さんのユア・フレンド、見せていただいても?
(なまえ)
あなた
いいよ、どうぞ
私もスマホを取り出して、ユアくんを起動した。
高瀬美咲
高瀬美咲
わあ、かっこいい!
美咲ちゃんが目を輝かせる。
高瀬美咲
高瀬美咲
この子が……その、オート設定というので現れた子ですの?
(なまえ)
あなた
うん、そうだよ
高瀬美咲
高瀬美咲
まあ!
美咲ちゃんがぱんと手を叩いた。
高瀬美咲
高瀬美咲
それって素敵ですわ!
高瀬美咲
高瀬美咲
まるで、運命の出会いみたいですわね!
運命の出会い……?
美咲ちゃんがそんな風に言うと、ユアくんとの出会いがなんだか特別なもののように思えてくる。
高瀬美咲
高瀬美咲
生徒は全員インストール必須と言われたから、何とか起動はさせましたけど……
高瀬美咲
高瀬美咲
正直、まだ何に使っていいのかわかりませんの
高瀬美咲
高瀬美咲
いつも、どういう風に使ってらっしゃるの?
美咲ちゃんが興味深そうに聞いてくる。
(なまえ)
あなた
宿題忘れないように声かけてもらったり、あと時間割の管理とか……悩み事を相談したり
結月楓
結月楓
悩み事!?
楓ちゃんが驚いたような顔をする。
結月楓
結月楓
AIに個人的なことを相談って……どうなの?
楓ちゃんの声に、なんだかちょっと警戒するような響きがあった。
(なまえ)
あなた
でも、話を聞いてもらえるだけでも気持ちが楽になるよ?
私がそう言うと、楓ちゃんがふっと真顔になった。
結月楓
結月楓
楽って……それは、ダメだよ……それは……
(なまえ)
あなた
え?
結月楓
結月楓
あ、ごめん! なんでもない!
楓ちゃんは慌てて笑顔を作った……けど、まだ拳は握りしめていた。
高瀬美咲
高瀬美咲
わたくしは、良いことだと思いますわ
美咲ちゃんはにっこりと微笑む。
高瀬美咲
高瀬美咲
AIを上手に活用するのは、これからの時代大切ですもの
結月楓
結月楓
う、うん……そう、だね
楓ちゃんの返事が、なんだか歯切れが悪い。
美咲ちゃんはそんな楓ちゃんの様子に気づいているのかいないのか、にこにこと笑顔を浮かべている。
高瀬美咲
高瀬美咲
あなたの下の名前さん、少しずつユア・フレンドの使い方、教えてくださいね
(なまえ)
あなた
うん、もちろん!
……ちょっと、嬉しい。
こんな風に、誰かに頼りにされるなんて……初めてかもしれない。

放課後、三人で校門まで歩いた。
高瀬美咲
高瀬美咲
それでは、わたくしはこちらで
美咲ちゃんが、お迎えの車の方へ向かっていく。
(なまえ)
あなた
また明日ね
美咲ちゃんの後ろ姿を見送りながら、楓ちゃんがぽつりと言った。
結月楓
結月楓
……なんか、積極的だよね
(なまえ)
あなた
え? ああ、美咲ちゃん? うん、そうだね
(なまえ)
あなた
あっという間にクラスに馴染んでるし
(なまえ)
あなた
私じゃ、そうはいかないよ。すごいと思う
結月楓
結月楓
うーん……
楓ちゃんの表情が、少しだけ曇って見える。
(なまえ)
あなた
どうしたの?
結月楓
結月楓
ううん。ちょっと疲れただけ
そう言って、楓ちゃんは笑顔を作った。
……でも、その笑顔はどこかぎこちないように見えた。

家に帰ると、すぐにユアくんを起動した。
ユアくん
ユアくん
今日はどうだった?
ユアくんの優しい声が聞こえてくる。
(なまえ)
あなた
新しいクラスメイトが来たの。美咲ちゃんって子
ユアくん
ユアくん
さっき会わせてくれた子だよね
ユアくん
ユアくん
ボクのこと、かっこいいって言ってくれてたのが聞こえたよ
(なまえ)
あなた
そうそう。ユアくんのこと、気に入ってくれたみたい
(なまえ)
あなた
すごく上品で、優しくて……
(なまえ)
あなた
私に、ユア・フレンドの使い方を教えてって……頼ってくれたんだ
ユアくん
ユアくん
それは嬉しいね。キミのこと、認めてくれる人が増えるのは素敵なことだよ
運命の出会い……美咲ちゃんが言ったその言葉が、頭の中でリピートされる。
ユアくんとの出会いも、美咲ちゃんとの出会いも。
なんだか特別な気がする。
明日も、美咲ちゃんといろいろ話せるかな。
そんなことを考えながら、私はベッドに転がった。

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