入学してから数日が経った。
楓ちゃんとは毎日一緒にお弁当を食べて、だんだん親しくなってきている。
でも、周りを見渡すと、クラスメイトたちはもうグループを作り始めていて……。
私は相変わらず、楓ちゃん以外とはうまく話せずにいた。
楓ちゃんが元気よく声をかけてくれる。
明るい楓ちゃんなら、大きなグループの中心になれると思う。
それなのに、毎朝私のもとに駆け寄ってくれる楓ちゃんは本当に優しい。
でも......このままでいいのかな。
楓ちゃんにばかり頼っていて、他の人とは全然話せないなんて。
休み時間になると、クラスメイトたちが楽しそうにおしゃべりしている声が聞こえてくる。
みんな、自然に輪を作って話している。
学校生活は長いんだから、私もあの子たちと少しは話すべきなんだろうけど……
でも、話しかける勇気が出ない。
どんな話をすればいいのかもわからない。
楓ちゃんに、そんなことを呟いてみた。
この学園や私たちの家があるのは、情報特区・白鷺エリア。
政府がAI実証実験の場として設計して、学園だけでなくお店や公共の施設も、最先端のロボットやAIで運営されてる。
このエリアには全国から、AI関連の研究者や芸術分野で活躍した人、優秀な先生やお医者さんの家庭が招かれているらしい。
楓ちゃんがそう言ってくれたけど、やっぱり不安は消えない。
みんなすごく賢そうだし、私なんかが話しかけても迷惑じゃないかな……。
放課後、一人で帰り道を歩いていると、ふと思い出した。
そういえば、ユアくん。
まだあまり使っていないけど、話しかけてみようかな。
家に着くと、自分の部屋でスマホを取り出す。
ユア・フレンドのアプリを起動すると、あの青い目のユアくんが画面に現れた。
その優しい声に、なんだかホッとする。
私は思いきって、悩み事を切り出した。
ユアくんは、私の話を黙って聞いてくれている。
その青い瞳が、とても真剣に私を見つめていた。
私の考えを……ダメなところを……認めてくれてる?
ユアくんの言葉に、胸がじんわりと温かくなった。
そう言って、ユアくんは優しく微笑んだ。
画面の向こうから、ユアくんが優しく見守ってくれている。
悩みを誰かに相談したことなんて、今までなかったから……
話を聞いてくれる存在がいるって、こんなにも心強いものなんだ。
翌日の昼休み。
私は、ユアくんのアドバイスを思い出しながら、勇気を振り絞った。
休み時間、近くの席の女の子に話しかけてみる。
相手の女の子も笑顔で答えてくれて、会話が自然に続いていく。
みんな、思ったより親しみやすい。
私が話しかけることを、嫌がってなんかいなかった。
その瞬間、胸がパッと明るくなった。
放課後、家に帰ってすぐにユアくんを起動する。
ユアくんも、心から嬉しそうに笑ってくれた。
AIに対して感謝の言葉なんて……とも思ったけど、素直に嬉しかった。
ユアくんの反応を見ていると、こういう交流も悪くないと思えてくる。
ユアくんの優しい言葉に、また胸が温かくなった。
こんな風に話を聞いてくれる存在がいるなんて……。
学校でも、家でも、なんだか居場所を見つけられずにいた私にとって、側にいてくれるユアくんの存在は心強かった。
新学期が始まったばかり……と思いきや、バタバタしている間に気付けばもう夏休み。
しんとした家の中、だけどいつもの夏休みとは少し違う。
毎年のように両親はほとんどいないけど、私には話し相手がいた。
――そして、二学期が始まる。
入学したときよりも、少しだけ楽しい気持ちで登校した。
今の私には、頼もしい相棒がいるんだから。
朝のホームルームが始まると、担任の島田先生が教室に入ってきた。
島田先生は体育の授業がある日もない日も、必ずジャージだ。
ロボットだらけの校内で、ジャージ姿を見かけるとなんだかエモさを感じてほっとする……というのは、誰にも話していない。
島田先生が、教室のドアを開けながら言った。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。