第182話

寿退職します!
1,861
2022/02/10 08:52
~あなたside~



今、私の目の前には社長室の扉がある
いつもなら呼び出されて訪れるんだけど…今日は自ら足を運んで来た

そして私の手には休日に書いた辞表が握られている


そう、私は今から社長に退職することを告げるのだ



私
失礼致します
社長、今お時間宜しいでしょうか?
社長
社長
ああ部長、どうしたんだい?


バクバクお落ち着かない心臓を無理矢理鎮め、意を決して入った社長室

社長の表情は柔らかい
良かった、機嫌悪そうでは無いな


私
あの…急な話で申し訳ないのですが…今月いっぱいで退職させて頂きたく…


と、言葉を添えながら社長のデスクの上に辞表を差し出した

一方社長はその辞表を見つめると読むことは無く、全てを悟ったような感じで口を開いた





社長
社長
結婚するのかね?
私
ぁ、はい、実は…
社長
社長
君もそのような歳頃だろう、いつかは退職を告げられると思っていたよ
私
自分の都合で…大変申し訳ございません
社長
社長
謝ることは無いよ、おめでたい事だ
私
ありがとう、ございます
社長
社長
ホントは君みたいな優秀な人材を手放すのは惜しいが…会社側としても引き止める権利は無いからな
私
そのように仰って頂けて光栄でございます
社長
社長
君の後任は新堂に任せる
しっかり引き継ぎ頼んだぞ?
私
はい、承知致しました!


どうやら辞表は受理されたようだ
長年働いたこの会社を去るのは寂しいが…私の後任がまりかなら心置き無く辞めれるな


社長
社長
あなた部長
私
はい?
社長
社長
今まで我が社の為に尽くしてくれてありがとう
ちゃんと幸せになりなさい
私
ありがとうございます!!





____



今月いっぱいで辞めるといっても今月も残すこと後数日だ
早々に引き継ぎをしていかないと…



新堂まりか
新堂まりか
あなたさん!探しましたよ!喫煙所にも居なかったですけど…どこ行ってたんですか?
私
ちょっと社長室にね
新堂まりか
新堂まりか
そうでしたか!あの、データ資料の確認を…
私
それならまりかがOKならそのまま提出しちゃっていいよ
新堂まりか
新堂まりか
ぇ、部長の許可が下りないと…
私
次からまりかが部長だから
新堂まりか
新堂まりか
……え?


いやいや、そんなキョトンとしないでくれる?
って、まだ何も知らせてないから無理はないか


私
私、今月いっぱいで辞めることになったから
新堂まりか
新堂まりか
今月いっぱいって…あと少しじゃないですか!?
私
まあ、そうだね
新堂まりか
新堂まりか
もしかして社長室に行ってらしてたのって…
私
結婚するから辞めるって言ってきたよ
新堂まりか
新堂まりか
ええええええええええ!?


リアクションがデカすぎなんだけど!
みんな吃驚してこっち見てるから!!

ま、いいや
隠してても仕方ない事だし
この際だから部署の人達に言っておくか


私
えー、急なことで申し訳ないんだけど…結婚することになったので私は今月いっぱいで退職します
後任の部長はまりかにお願いするから、みんなよろしくね


その瞬間、お祝いの言葉と共に拍手の音で包まれた
みんな凄い暖かくて…良い人材に恵まれてたんだな


新堂まりか
新堂まりか
結婚のお相手は…もちろん中島さんですよね?
私
うん、そうだよ?
新堂まりか
新堂まりか
おめでとうございます!寿退職ですね!
私
まりかの方が先にすると思ってたけどね
新堂まりか
新堂まりか
年齢のことを考えるとあなたさんが先なのは当たり前です!!
私
結婚に歳の順は関係ないから


まあとりあえず…こっちは退職する段取りは付けたよ
あとは健人の方だ
ジャニーズ事務所の社長さん…結婚の承諾してくれるのかな


健人は私と違って簡単に結婚とか出来るような職業では無い

なんか不安になってきた…













____



平野紫耀
平野紫耀
お前、結婚するんだってな
私
うわ…もう知ってんの!?
平野紫耀
平野紫耀
俺の部署もお前の結婚話で持ち切りだよ


タバコを吸おうと喫煙所に向かってると紫耀に声を掛けられた


私
何で紫耀がここに居るのよ
フロア違うでしょ
平野紫耀
平野紫耀
手が空いたから直接お前におめでとう言いに来たんだよ
私
ふーん、それはどうもありがとう


その割にはおめでとうって言うような顔してないけど…そんな悲しそうな顔しないでよ


平野紫耀
平野紫耀
まあ、あの日…お前を送り出してから健人くんと結婚するんだろうって考えてたけど…実際に聞かされると…なんつーか、何で俺じゃ無いんだろって思っちまうな
私
でも紫耀のお陰で真実が掴めた訳だし…背中押してくれて感謝してるよ
平野紫耀
平野紫耀
離婚したら俺んとこ来いよ?笑
私
いい加減諦めてくれたんじゃないの!?
平野紫耀
平野紫耀
俺は諦めが悪い男だろ?笑


ニヤッと口の端を上げ意地の悪い顔をする紫耀
でもそれは一瞬で、私の頭にポンと手が乗せられた


平野紫耀
平野紫耀
おめでとうあなた、幸せになれよ?
私
うん、ありがとね…紫耀


名残惜しそうに手を引いた紫耀は、少し微笑みを残したあと自分の部署へと戻って行った


ずっとこんな私のことを思い続けてくれてありがとう
紫耀との思い出はこれからも…一生私の胸の中に閉まっておくよ

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