~あなたside~
今、私の目の前には社長室の扉がある
いつもなら呼び出されて訪れるんだけど…今日は自ら足を運んで来た
そして私の手には休日に書いた辞表が握られている
そう、私は今から社長に退職することを告げるのだ
バクバクお落ち着かない心臓を無理矢理鎮め、意を決して入った社長室
社長の表情は柔らかい
良かった、機嫌悪そうでは無いな
と、言葉を添えながら社長のデスクの上に辞表を差し出した
一方社長はその辞表を見つめると読むことは無く、全てを悟ったような感じで口を開いた
どうやら辞表は受理されたようだ
長年働いたこの会社を去るのは寂しいが…私の後任がまりかなら心置き無く辞めれるな
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今月いっぱいで辞めるといっても今月も残すこと後数日だ
早々に引き継ぎをしていかないと…
いやいや、そんなキョトンとしないでくれる?
って、まだ何も知らせてないから無理はないか
リアクションがデカすぎなんだけど!
みんな吃驚してこっち見てるから!!
ま、いいや
隠してても仕方ない事だし
この際だから部署の人達に言っておくか
その瞬間、お祝いの言葉と共に拍手の音で包まれた
みんな凄い暖かくて…良い人材に恵まれてたんだな
まあとりあえず…こっちは退職する段取りは付けたよ
あとは健人の方だ
ジャニーズ事務所の社長さん…結婚の承諾してくれるのかな
健人は私と違って簡単に結婚とか出来るような職業では無い
なんか不安になってきた…
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タバコを吸おうと喫煙所に向かってると紫耀に声を掛けられた
その割にはおめでとうって言うような顔してないけど…そんな悲しそうな顔しないでよ
ニヤッと口の端を上げ意地の悪い顔をする紫耀
でもそれは一瞬で、私の頭にポンと手が乗せられた
名残惜しそうに手を引いた紫耀は、少し微笑みを残したあと自分の部署へと戻って行った
ずっとこんな私のことを思い続けてくれてありがとう
紫耀との思い出はこれからも…一生私の胸の中に閉まっておくよ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。