第21話
XXの開花 XXⅤ
呉さんと酒葉さんの決着のつかなそうな試合に最初に口を出したのは捺袮だった。
顔を見合わせて笑い合う二人を捺袮はユリを見る時のような目で見ていた。
イラついたように足に指先を打ち付けてる千早を俺はなだめる。
すると、呉さんと酒葉さんはフィールドの中央に集まって2人で何か話し始めた。
一霖が苦笑する。
有り得そうで俺も思わず笑ったが、これで降参したら全敗になることに気が付くと笑いは止まる。
全敗って生き残れる可能性あるのか?
それだったら既に一勝はしてる呉さんが降参した方がいいんじゃ…
2人が拳を引いてお互いに向き合う。
止めようにもそれはコーチングに入る。
どうにかして伝えれないか、と考えるもそんな都合のいいように俺の頭は働かなかった…。
は?
ポンッ!!!っと威勢のいい声がフィールドに響くと同時に座っていた千早は…
と舌打ちをした。
「こいつらヤバい」と言いたそうな目をした捺袮は静かにそう宣言した。
ダラダラとした試合に不機嫌な千早は置いといて、酒葉さんが大丈夫かが本当に気になる。
全敗でも大丈夫、とは信じたいけど……
ずっと何かを考えていたのか手元で浮いている水滴を指で遊びながら空を見つめる霙先輩。
すると、突然その水滴は氷柱に変わった。
俺は慌てて最初に貰った紙を見た。
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第1ゲーム『個人戦』
・自分の能力を試す為のゲーム
・1VS1でのタイマン
・降参有り
・相手が死亡、戦闘不能、または降参で勝利
・能力以外にも外野に影響が無ければ、何を壊して
も良し
・基本、外部からのコーチングは禁止(応援はOK)
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先輩の言う通り、ユリと捺袮がこの個人戦で生き残る為に必要なことは一切言ってなかった。
ただ単に能力の存在について説明しただけ。
そして、このプリントにも試合に勝利する方法しか書いていない。
それってつまり……
先輩を見ると、小さく頷くだけだった。
持っていた氷柱を投げるとその氷柱は真っ直ぐにユリへと飛んで行く。
氷柱に驚きながらユリは半笑いの状態でポップコーンが入っていた箱を自分の前に持ち上げ、氷柱から守った。
頭の中で繋がったのか箱に刺さる氷柱から先輩に視線を移したユリ。
先輩と俺の雰囲気から何となく状況を察したのかユリは不気味な笑みを浮かべた。
少し離れたところに座っていた龍が同じ高校の人が立ち上がるのを見て嫌そうな顔をする。
何だかんだ言いながらも2人はフィールドへ。
会話も多くなく、すんなりと進み一瞬で…
─────── 勝負は始まった。