第24話

XXの開花 ⅩⅩⅩⅠ
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2020/03/12 14:24
音羽おとは 捺袮なつね
始めていい?
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
うん、いいよ。
音羽おとは 捺袮なつね
第二十一試合、碑賀東 対 本能寺千早。
音羽おとは 捺袮なつね
始め。
捺祢の試合開始の合図と同時に東は千早との距離を詰めて、逆に千早は後退し距離を置く。


東には千早がどう動くのかが全部分かる。

しかも、戦闘能力もずば抜けて高い。

それをアイツはどうやって…
碑賀ひが あずま
…先に聞こう、何か策はあるのか?
東はそう千早に聞くも回答が見えたのか少し驚いたような表情をする。

驚く東を見た千早は鼻で笑う。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
普通にあるわけないでしょ。未来予知に対抗なんて無理に決まってる。未来は決まっているんだから。
碑賀ひが あずま
なら、どうする気だ。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
見えてるくせに……私に出来ることをするまで。負けたくはないけど、もし負ける時には傷跡残してやる。
瀬戸口せとぐち りゅう
おぉ!東相手にかっこいいな、あの子。ああいう子良いよなぁ〜
楠木くすのき しん
いやいや、あいつだけはやめとけ。あれは人の形をしたゴリ ────
ボオォォォォォッ!!!
楠木くすのき しん
あ"っつっ!!!!!
慎の目の前の空気が燃え出し、前髪から煙が上がる。

龍はえぇ良いじゃん〜とか言いながら消えていく慎の前髪を治癒?していた。
千島ちしま 瑞樹みずき
なぁ、龍。
瀬戸口せとぐち りゅう
ん?
千島ちしま 瑞樹みずき
龍の治癒ってどんな傷も治せるのか?
瀬戸口せとぐち りゅう
いや〜…そうでもない。あくまで"傷"だな。病気は分からないけど、傷跡とかは無理らしい。
結局どんな能力にも弱点はあるんだよ、と半笑いで言ってくる龍。

龍のは治癒の限界があること。
慎のは使い過ぎると自分の命を落としかねないこと。
千早のは調整に失敗したら自分も燃えること。
多岐先輩のは攻略された時に対処できないこと。
三輪君のは本人の懐ががら空きになること。

確かにレアの能力にも弱点はある。

………だけど、それは3人を除いての話。

笧三拓のベクトル、力の向きの操作。
成瀬冴羅のピカソ、描いた絵の具現化。
碑賀東のノストラダムス、未来予知。

この3人に関しては弱点というものが存在しない。
瀬戸口せとぐち りゅう
!……ほ〜ら、追い詰められてきた。
千早は守るばかりで攻撃が出来ていなかった。

攻撃しようにも未来が見える東には当たらない。

能力を使わず、守るばかりの戦い。
碑賀ひが あずま
守ってばかりじゃ試合は終わらないぞ?
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
そんなこと知ってる。
そう言うと、千早は東の腕を掴んだ。

東には見ていたはずなのに避けなかったのは多分、千早の行動の意味が分からなかったからだろう。
千島ちしま 瑞樹みずき
…何か、龍、ご機嫌そうだな?
瀬戸口せとぐち りゅう
あったりまえだろ!戦いにおいて悩む東なんて滅多に見れねぇからな。ほんっと彼女は面白い子だよ。
2人の試合にテンションが上がる龍。

だが、その戦っている2人の間には龍のように明るい空気ではなくピリピリとした空気が流れていた。

東は腕を引こうとするが、馬鹿力……じゃなくて、力が強い千早がそれを許さない。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
あたしの能力、予測でしかないけど…気持ちが火力と比例している。あたしはまだ弱い、ここで頑張ろうともあんたに適うことはない。でも、あたしはこんなところで引き下がりたくはない。
そうなったら、あたしは何をすると思う?とニヤリと笑いながら千早は東に問う。

何を…と言いかけたところで東の表情が怪訝から危険を察知した警戒したものに変わった。
碑賀ひが あずま
お前っ、それ ─────
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
遅い。
次の瞬間、フィールドに大きな火柱が立った。

熱風が火柱の方から吹いてきて、俺は腕で顔を守る。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
あの火力は凄っ…!
くれ 葉月はづき
千早ちゃん!!
熱風が少なくなってきたところで、腕をゆっくりと退かすとそこには座り込む千早と…腕が燃える東。

千早が途切れ途切れに笑いながら、東の腕を指すと炎は消える。

東の右の肘から先は火傷の跡が残っていた。
碑賀ひが あずま
っ……
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
……音羽、これって死ぬか、瀕死にならない限りは傷が治ることはないよね?
音羽おとは 捺袮なつね
まぁそうだね。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
なら、いいか。
音羽おとは 捺袮なつね
降参?
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
違う、もう動けないから戦闘不能。やる気があっても疲れた。
音羽おとは 捺袮なつね
…本能寺千早の戦闘不能により碑賀東の勝利とする。
楠木くすのき しん
何があっても降参はしねぇんだな…
瀬戸口せとぐち りゅう
凄い凄い!あの東に牙向いて、ちゃんと突き刺したとか!
龍が感心の声を上げていると、少しふらつく千早がこっちに戻って来た。
くれ 葉月はづき
凄いかっこよかったよ!
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
ありがと。
千島ちしま 瑞樹みずき
ちは…
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
黙れ。
千島ちしま 瑞樹みずき
がっ…は……
楠木くすのき しん
い"だっ!!!
千早の拳が俺と慎の腹にめり込む。

すると、気が済んだのかご機嫌そうな表情を見せた。


殴られる準備、しとけば良かった…てか、何で俺……
瀬戸口せとぐち りゅう
くっ…ははっ…!
千島ちしま 瑞樹みずき
おい、龍…笑う、な……
瀬戸口せとぐち りゅう
えぇ?あ、ごめんごめん。笑ってない。
楠木くすのき しん
嘘つきやがれ……
瀬戸口せとぐち りゅう
にしても、君凄いね。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
どうも。
楠木くすのき しん
俺達の話、聞けよ…!
瀬戸口せとぐち りゅう
ちなみにあの何をするか、の答えは何だった?
慎の言葉を完全に聞き流している龍が何の涙かは何となく察しがつくが、まぁ謎の涙を拭いながら千早に尋ねる。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
どうせ負けるなら格上の相手に傷を残す名誉ある敗北、それがさっきの答え。
そう千早は小さな欠伸を一つしてから少しだけ楽しそうに、そして誇らしそうに笑った。

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