国木田先輩がいたコンビニの前、そこに着地した僕は瞼を閉じて2人を千里眼で探す。
パッと頭に浮かんだ2つの光景に僕は戸惑う。
成瀬さんはこの地図の中で1番大きい三冠デパートに着いたらしい。そして、モール内にある画材屋で目を輝かせながら絵の具、ペンキ、はけ、スケッチブック、鉛筆…といった絵を描くのに必要な道具を片っ端から盗っていた。
福冨君は飛ばされた最初の交差点。何故か痛そうに頭を押さえながら交差点にあった看板を指しているユリちゃんに叱られていた。
呆れたような笑みでそう言うとユリちゃんは歩いていなくなった。
千里眼は長時間使ってると目がかなり疲れる。
細く息を吐いて能力を解除したところでトランシーバーから既に疲れたような福冨君の声が聞こえてきた。
福冨君がそんなことを呟く。
僕は三冠デパートに向けて歩きながら“街に隕石を落とす”というぶっ飛んだ作戦で良いのかをもう一度よく考え直していた。
さっきまで“出来る限り”だとか“きっと”だとか自信なさげだった2人から“絶対”と自信の声が聞こえて、まだ不安に思っていた僕は少し笑った。
頑張ろうとしてるのにその頑張りを不安に思うなんて失礼だよね。
仲間なんだから俺もちゃんと2人を信じないと。
トランシーバーをしまうと僕は一旦立ち止まる。
敵に越される前に屋上に着かないといけない。
どうか振動でこの肩が痛みませんように。
心の中で念じて肩に触れると、僕は呼吸を整えて三冠デパートに向かって走り出したのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。