第33話
成瀬さん、福冨君と早く合流…
国木田先輩がいたコンビニの前、そこに着地した僕は瞼を閉じて2人を千里眼で探す。
………え?いやいや、ちょっと待って、2人とも何やってるの…
パッと頭に浮かんだ2つの光景に僕は戸惑う。
成瀬さんはこの地図の中で1番大きい三冠デパートに着いたらしい。そして、モール内にある画材屋で目を輝かせながら絵の具、ペンキ、はけ、スケッチブック、鉛筆…といった絵を描くのに必要な道具を片っ端から盗っていた。
福冨君は飛ばされた最初の交差点。何故か痛そうに頭を押さえながら交差点にあった看板を指しているユリちゃんに叱られていた。
成瀬さん!福冨君!何やってるの!?
『さ、さっき飛んだ時に ───── 』
『飛んだ時に一霖君が驚いて何故か私の腕掴んだせいで私まで浮いて看板に思いっきり頭ぶつけてたの!!』
『ご、ごめんなさい!!!』
『も〜、私だから良かったものの捺祢だったら速攻殴られるんだからね!』
呆れたような笑みでそう言うとユリちゃんは歩いていなくなった。
千里眼は長時間使ってると目がかなり疲れる。
細く息を吐いて能力を解除したところでトランシーバーから既に疲れたような福冨君の声が聞こえてきた。
『………一霖、最初の場所です~…』
うん、災難だね…成瀬さんは?
『は〜い!成瀬です!私は現在、三冠デパート3階にある画材屋さんで掘り出し物見つけたので拝借して屋上に向かってま〜す!』
『屋上?』
『はい!キャンパスは大きい方が描きがいがあるんですよ〜!』
キャンパスの大きさが具現化のサイズを変えたりする?
『まだ分からないです!鉛筆のモノクロより色があった方が見た目的にも強くなる気がしたので思い立ったら即実行!…的な感じでやってみようかなと!』
『相手は火、水、地面…だから、それに何か対抗出来ることだと良いな。僕と春日君、どう考えてもサポートだし…』
あぁ、確かに。千里眼とテレパシーって戦いには向かないね。
『千早先輩が出した炎を霙先輩が氷結させて飛ばすパターンとかありそうですよねー…先輩方の行動で有り得るのは唯一攻撃が出来る私を最初に潰すかサポートに長けてる一霖先輩と春日先輩を潰すかのどっちかなはず…』
『千早ちゃんと先輩のペアがなぁ…』
『……あっ、私閃きました!』
『なになに?』
『“隕石”落としましょう!』
え?
『はい?』
『私が描いた隕石でこの街ごと潰しちゃいましょう!』
『嘘でしょ?』
『任せてください!私、ちゃんと茶色系のペンキも持って来たので!』
問題そこじゃない…
『でも、確かに隕石って燃えてるから巨大なら千早ちゃんが燃やす前に落ちるだろうし、衝突寸前って2300度超えるとか聞いたことあるから霙先輩にも凍らすの無理だよね…』
福冨君がそんなことを呟く。
僕は三冠デパートに向けて歩きながら“街に隕石を落とす”というぶっ飛んだ作戦で良いのかをもう一度よく考え直していた。
『どうします?それで良いな今すぐにでも描き始めます!時間はちょっとかかっちゃいますけど…』
どのくらい?
『最短10分、最長15分くらいです!コンビニと最初の位置なら10分弱もあれば着くかと!』
…福冨君、三冠デパート行ける?
『地図見ながらなら!意外とここの交差点からは近いみたい。』
『屋上まで来れたらお願いします!あ、デパート内に罠あるんですよ。』
え、地味にキツい…
『今、館内がトリックアートとコラボしてるみたいであちこちにあったので私も綺麗にいくつか足しときました!』
ははっ…無理ゲーじゃないかな…
『ま、まぁ、大丈夫だよ!僕達は無事に冴羅ちゃんのところに着けるし、僕達は千早ちゃん達にも“絶対”勝てる!』
『ふっふっふっ〜!そうですよ!春日先輩!私達なら“絶対”勝てます!』
さっきまで“出来る限り”だとか“きっと”だとか自信なさげだった2人から“絶対”と自信の声が聞こえて、まだ不安に思っていた僕は少し笑った。
頑張ろうとしてるのにその頑張りを不安に思うなんて失礼だよね。
仲間なんだから俺もちゃんと2人を信じないと。
…うん、勝とう。僕と福冨君は今から全速力で三冠デパートに向かう、成瀬さんは隕石を描く、これで良い?
『うん!』
『おけです!』
それじゃ、行くね。
トランシーバーをしまうと僕は一旦立ち止まる。
敵に越される前に屋上に着かないといけない。
どうか振動でこの肩が痛みませんように。
心の中で念じて肩に触れると、僕は呼吸を整えて三冠デパートに向かって走り出したのだった。
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