第16話

XXの開花 ⅩⅤ
208
2020/01/12 13:22
代々木よよぎ あかつき
そういや、冴羅。
成瀬なるせ 冴羅さら
はい?
試合の開始早々、他のことに興味があったのか、代々木先輩が隣に座る成瀬さんに話しかける。
代々木よよぎ あかつき
お前、あの時ぬいぐるみを渡したのは俺の能力を察したのか?
成瀬なるせ 冴羅さら
えぇ〜?そんなの無理ですよ〜!偶然ってやつですって!偶然!
代々木よよぎ あかつき
そうか…あともう1つ。
代々木よよぎ あかつき
あの大きなぬいぐるみはどこでどうやって入手した?
代々木先輩の質問、その質問に成瀬さんはニヒヒ、と悪戯っ子のように笑う。
成瀬なるせ 冴羅さら
う〜ん…私の能力っていうのが正解ですかね?可愛いドラゴン欲しいな〜って思ってたら叶った的な?よく分からない!
でも〜…、と言葉を伸ばしたと思うと成瀬さんはふんわりとした、本心が見えないような微笑みを浮かべた。

そして、次に言った言葉に俺は軽く恐怖を感じた。
成瀬なるせ 冴羅さら
…まぁ、私の能力だと人を殺めるのも簡単だね。逆に守ることも出来るんですよ〜!
『私の能力だと人を殺めるのも簡単だね。』


敬語が消えたのがさらに恐怖心を煽る。

同じように驚いたのか聞いていた代々木先輩の表情も引き攣っているように見えた。
代々木よよぎ あかつき
……。
成瀬なるせ 冴羅さら
え、暁君から聞いてきたのにその反応は酷くありません?
代々木よよぎ あかつき
いや、何も…
成瀬なるせ 冴羅さら
別に簡単っていうだけで殺すわけないじゃないですか〜!あくまで殺ろうと思えば殺れるって話です!
それっぽい言い訳をする成瀬さん。

人を殺すくらいの能力を持っていたとして、本当に殺す気がないのかが全く分からない。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
さっきからあいつ、ヤバそうなことしか言ってない。
千島ちしま 瑞樹みずき
見た目的にそんな感じのこと言わなそうに見えるけどな…
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
何か分からないけど…あいつとは戦いたくないね。
酒葉さかば みのり
じゃあ、聞いてみましょ!
千島ちしま 瑞樹みずき
え?
俺と千早の会話を聞いていたのか酒葉さんが席を立つなり、成瀬さん達の元へ行き声をかけた。

成瀬さんは不思議そうに酒葉さんを見たが、何回か話すと2枚の紙を見せていた。

お礼を言って、手を振ると酒葉さんは俺達のところに戻ってくる。
酒葉さかば みのり
聞けました!
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
聞けたんだ…
酒葉さかば みのり
冴羅ちゃんは10と14の試合に出るらしいです!
千島ちしま 瑞樹みずき
10と14…
そう言えば、俺って9と何だっけ…
あの辻君に邪魔されてまだ見ていな……………は?
ポケットから引いた紙を取り出すとそこには『14』と綺麗に印刷されていた。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
へぇ、お疲れ様。
千島ちしま 瑞樹みずき
何だよ、千早。他人事みたいに言いやがって。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
だって、他人事でしょ。あんたが試合に勝とうが負けようがあたしには全く関係無いし。
千島ちしま 瑞樹みずき
まぁそうだけど…
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
なら、そういうこと。それまでに自分の能力を見つけることだね。
四月一日わたぬき 柊也とうや
本能寺先輩は分かったんですか?
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
うん。上手く使えるかは分からないけど、どんな能力かまでは理解した。
自分の能力を理解していないのは俺と深海先輩。


早く見つけないと、成瀬さんとの対戦が凄い不安で仕方ない…

…いや待て、その前にあの辻君……


この先を考えるだけで俺は疲れてきた。

文句を言ったところでユリに伝わることはないのは分かってはいるけど、本当にやりたくない。
福冨ふくとみ 一霖いちりん
もしも〜し、聞こえてますよ〜?
千島ちしま 瑞樹みずき
え?あっ…ひ、人の考え事を覗くな!
福冨ふくとみ 一霖いちりん
だって〜!ずっと気難しそうな顔してると気になるじゃん?
手で口元を押えてクスクスと笑う一霖。
呆れていると、それよりも、と言葉を続ける。
千島ちしま 瑞樹みずき
それよりも?
福冨ふくとみ 一霖いちりん
早くしないと捺袮君、不満そうだよ?
音羽おとは 捺袮なつね
……。
遠くからでも分かる捺袮の冷ややかな目。

能力について考えている間に終わってしまったのかフィールドには俺の試合相手となる辻君が今か今かと試合の始まりを待っていた。
つじ 林太郎りんたろう
瑞樹せんぱーい!試合なんですから、早くしてくださいよー!
千島ちしま 瑞樹みずき
あ、ああ…てか、試合は?
くれ 葉月はづき
相討ちだったよ?早くしないとユリちゃんが騒ぐだろうし早く早く!
福冨ふくとみ 一霖いちりん
瑞樹やっちゃえ〜!!!
楠木くすのき しん
頑張れよ。
よく分からないまま俺は送り出されて、階段を降りるとフィールドに立った。

俺を見るなり捺袮が大きく溜息を吐いたのは見なかったことにしておく。

溜息を吐いた後、捺袮はいつも通りの考える仕草を見せると辻君を見て口を開いた。
音羽おとは 捺袮なつね
辻林太郎は……溜め込む。
音羽おとは 捺袮なつね
千島瑞樹は ──────

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