後ろの座席から顔を出した酒葉さん。
確かにまだ公園で戦っているのを見ていない。
あぁぁ!そんなことないです!と困る酒葉さんに東は苦笑を浮かべる。
そうだ、東がまだ残っていた。
よりによって、あの東が…
俺と慎と酒葉さんと東と……
誰も敵にしたくない。特に東だけは。
『仲間になって戦うことがあればよろしく。』
最初にそんなことを言ってたけど、これで敵になったら俺がフルボッコで死ぬ気しか…
背後から飛んできた誰かの蹴りが慎の肩に命中する。
恐る恐る背後を見ると千早様が真顔でお立ちになっていらっしゃって、俺は見なかったことにしようと前を向く。
話の外野だった呉さんと龍に軽く煽られ──龍のは普通に正論だが──反論した慎に千早様から2発目の制裁が下される。
見兼ねた一霖が仲裁に入ったことで…いや、一方的だから仲裁はおかしいか。
引き止めたことで舌打ちはしたものの千早様からの制裁は終わった…
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木ばかりの景色。
多岐先輩の姿を思い浮かべると、園内マップの前でトランシーバーを片手にしている本人の姿が見えた。
トランシーバーをしまった僕は足元に気をつけながら歩き出した。
見えないだけで木々の間に潜んでいるかもしれない、そう思うと怖い。
…ついでに言うと相手が成瀬さんなのも少し……
薄い茶色の半透明の塊が落ちているのを見て、僕は立ち止まる。
しゃがんでその塊を手に取ってみると少しツルツルしたような手触りで、よく見ると表面に沢山の六角形があるように見えた。
あ、これってもしかして…
指先でゆっくり引き伸ばすと、塊だった謎の半透明の物体は長さ50cmくらいにまで伸びた。
蛇が脱皮した皮?
脱皮してこの大きさってことは捕まえる蛇の大きさは50cmよりも大きい可能性が高い。
どうにかなるのかな…まぁ、どうにかなるさ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!