第54話
XXの時間 Ⅵ
言われてみれば、当たり前のように千早は教室を出て行ったが、他の奴らは全員教室にいる。
探索に向かったのか、トイレか何かか、はたまた教室から出るのだと思ったのか…
古語で話しかけられた捺祢は本を読んだままで顔は上げなかったが、大きく漏れた溜息からは完全にめんどくさい、ダルいといった感情が感じ取れた。
分かってる。分かってるけど、この問題ヤバいって。
何で周囲の奴らはこんなの解けんだよ。
学校で習ったことの応用がなんちゃらって前に問題を理解すること自体に苦しむ。何だこれ。は?
カンニングしようにも俺の能力は使えねぇし、と言って俺は東みたいに素手でどうにかなる力も無い。
無理じゃね?誰かヒントをくれ、ヒントを。
うるさっ…と呟く捺祢は本に栞を挟んで歩き出すと、代々木先輩の横で足を止める。
成瀬さんの反論に教室は騒然。
ネタに走っている代々木先輩の発言に笑いそうになっている俺の集中力はどんどん下がっていく。
バン!!と大きな音が教室で鳴り、代々木先輩から呻き声が漏れる。
顔を上げると代々木先輩は痛てぇ…と頭を抱え、その横の捺祢は代々木先輩の反応に表情一つ変えることなく本の栞を取りながら教室の前へと向かった。
本で思いっきり頭を叩かれたのか…可哀想に……
代々木先輩の方からカカカッとシャーペンの音が煩いくらいに聞こえてくる。
俺は遂に無理だと悟って、座ったまま手を挙げた。
持っていた模範解答で鶴を折っているユリが俺に気付くと、不思議そうに首を傾げる。
俺の事を凄い哀れみながらユリは立ち上がると、黒板に一つの数式を書いた。
捺祢の本を読みながらの言葉を聞いたユリは数秒間捺祢を見た後に本を奪い取り、思いっきりその頭に叩きつけていた。
拗ねたユリにテストを持っていく笧三。
俺は減っていく同士に焦り、プリントにヒントを写すと言われた通りにどうしてこの数式が出てくるのかを考え始めたところで隣の龍が東に声をかける。