第15話
XXの開花 ⅩⅢ
驚いた声を上げたものの龍は軽々と避ける。
……が、いくつか当たった物もあるのか所々から血が流れ出している。
血がボタボタと流れ出す慎。
苦痛の表情を浮かべるか、切るのをやめない。
そう言うと、龍はニッと笑った。
その余裕そうな笑みに俺は違和感を持つ。
本当に慎が優勢なのか……?
それとも、龍はまだ本気を出してないだけとか…
スグにその違和感の正体は分かった。
────── 龍の傷が全て消えていたのだ。
自らを傷付けることで攻撃する慎。
攻撃を受けても治すことが出来る龍。
俺は今までの考えが勘違いだと言うことに気付く。
優勢なのは慎ではなく龍だ。
なんせ、慎が能力の使いすぎで血液不足で倒れるのを待つだけで良いのだから。
心配の声が席から上がる。
隣の一霖も内容までは聞こえなかったけど、両手を組んで祈るように呟き続けている。
慎は深海先輩の言う通り流石にヤバいと思ったのか、何かを考えている様子だった。
血塗れになった腕に視線を一度移すと、慎は龍に答えるように笑みを浮かべた。
そして、ナイフを握り直す。
ザシュッという嫌な音と共に慎はナイフを深々と腕に突き刺すと、今までと比べ物にならないくらいの血がボタボタと地面に吸い込まれていった。
すると、地面に落ちる寸前にその血液は固まり、鋭い刃となって龍の全方位を囲む。
無数の刃が一斉に龍に襲いかかる。
龍は両足を肩幅に開くと、襲ってくる刃を片っ端から弾き飛ばした。
でも、弾けない方が多くて足や脇腹にどんどん突き刺さっていく。
慎が膝を着くと同時に龍はいきなり宣言した。
諦めたように手を挙げ全てを受けた龍。
スグに傷を治すと、座り込む慎に近付いた。
そう明るい笑顔で笑うと、龍は慎の手を取り傷を治したのだった。