第42話
XXの真偽 XXXⅥ
ユリさんは青峡大学の公園で拗ねたようにピン付き手榴弾を転がして遊び、成瀬さんは病院で何やら絵を描いている。
僕はそう呟くと走り出す。
長時間能力を使い続けるのはほんと目が物凄く疲れるけど、今はやむを得ない。
移動する“彼ら”を追いかけて数分。
曲がり角を曲がろうとした瞬間、僕は足を止めた。
別に殺られに来たわけじゃない。
“交渉”しに来たんだ。
良い言葉が見つからなくてマシと言うと、捺祢君は表現が気に入らなかったのか溜息を零した。
裏切ってしまった2人には申し訳ないけど、敵と一緒なのはどうしても嫌だ。
一霖君よりユリさんの方が強いとしても、無理。
成瀬さんを思い浮かべると、さっきと分からずルピス病院の床で黙々と紙に絵を描いていた。
何を描いているのかまでは暗くて見えないけど、居場所は分かったから良しとしよう。
成瀬さん、本当にごめんね。
そう思いながら、ナピス病院に向かって走り出した捺祢君達を僕は追いかけたのだった…
衝撃波で危うく耳が死ぬところだった私は手榴弾で遊んでいたが、ずっと拗ねてても何も変わらないからと大学を出た。
いつかはナピス病院に着くだろうし、ナピス病院に先回りして迎え撃つのもあり。
向かっている途中で後ろから奇襲をかけるのもあり。
どれが効率良いかな?
取り敢えず、今の捺祢達の居場所を春日君に聞こうと私はトランシーバーを取り出す。
少ししても返事は来ない。
私がただ独り言を喋ったみたいになっちゃった。
春日君なら捺祢達の位置は把握してるから近付く前に逃げることは出来るはず。
既に見つかって逃げている最中なのか、それとも…
トランシーバーの通信を冴羅ちゃんに繋げてそう言うとイヤホンから元気な声が返ってきた。
春日君はバレてないつもりなんだろうけど、残念。
私、そんなに甘くないんだよなぁ…