第18話
XXの開花 ⅩⅨ
碑賀が指したのはフィールドで固まる辻。
辻に視線を送った瀬戸口は呆れた笑みを浮かべる。
褒め言葉を連発する瀬戸口に碑賀は苦笑した。
すると、今度は瀬戸口がある人を指す。
面白い回答を待つように瀬戸口は碑賀がどんな表情なのか見ようと顔を覗き込む。
だが、その碑賀の表情は予想と違ったのか瀬戸口は顔を強ばらせた。
第十一試合、辻林太郎 対 三輪颯。
始まって少しが経つが、試合に進展は見られない。
眉間にシワを寄せた千早が軽く慎を睨む。
睨まれた慎はピタリを唸るのをやめた。
流石、千早だ。
千早の言葉マシンガンを受けて、慎の精神が段々と小さくなっていくのが見える。
辻君の声が競技場に響く。
身動き一つしない辻君はムッとしていた。
それに対し相手の颯君は警戒している。
それとも〜…と呟くと辻君は口元を三日月のようにして不気味な笑みを浮かべた。
三輪君はじっと見ているだけ。
その目には迷いが見られた。
すっと手を上げると辻君の体が逆さに吹っ飛ぶ。
一霖がフィールドの変化に声を上げた。
場外に吹っ飛ぶ!…と思った刹那、急に辻君の体が停止する。
え、飛んでたのに何で……
よく見ると、フィールドに指が突き刺さってそのおかげで飛ぶ勢いが止まったんだ。
納得したところで辻君が楽しそうに笑う。
フィールドに手を付くと、さっきの呉さん並みの速さで三輪君に突っ込んで行った。
ドゴォォン!!!!!!
大きな音が鳴り、咄嗟の判断か三輪君が能力を発動させ、辻君が今度こそフィールド外の壁に思いっきりぶつけられた。
辻君にぶつかられた三輪君はその勢いでフィールド外に出る。
呆れた声を出した捺袮が壁に思いっきりぶつかった辻君の回収に向かう。
壁近くに倒れている辻君は……
『さっきの分をどーん!……ってね?』
運動部とは言え、俺の力だけじゃあそこまで人をぶっ飛ばすのは無理なはず。
となれば?俺以外からも力を吸収していた?
それとも………あいつ自身の力か?
突然の大声。
みんながさっきから静かだったユリに注目する。
その時、俺はこのゲームが始まって初めてユリの笑顔以外の表情を見た。
不満そうな嫌そうなそんな表情。
ユリ、何を言うつも ──────