第48話
XXの実力 ⅩⅠ
近くにいるとして何処にいる?
そんな蛇を専門に学んでるわけじゃないから抜け殻から何蛇かなんて僕には分からないし……
蛇の抜け殻と睨めっこすること数分。
不意に背後から足音が聞こえてきて振り返ると、そこには多岐先輩が立っていた。
持っていた抜け殻を見せると、多岐先輩は困ったように眉を下げる。
どうしたものか……
何かを感じた多岐先輩に言われて、僕は抜け殻を片手に大きな木の後ろへと早足で向かう。
木の後ろに着いたと同時に「あれ〜?」と少し高めの声と足音が聞こえてきた。
“何となく”で普通、ここまで来れる?
でも、ルール違反をしようにもユリさんに相手の位置を知る能力がない。
捺祢君が映画館で見ながら教えることは出来るかもしれないけど、彼はルール違反に厳しい印象がある。
大きな独り言を言いながらユリさんは同じ場所を行ったり来たりしながら周囲を見回す。
多分、ここにいることがバレるのも時間の問題。
何とかして離れないと…
そう思った時…
いつものような明るい声ではなく、静かな声を場に響かせるとユリさんは来た道を戻っていなくなってしまった。
ユリさんが立っていた場所まで歩き、最後の方に見ていた方向を見て僕はピタリと動きを止める。
黒っぽい物体が木の根元に何個も置かれていて、赤い数字が点滅しながら減っていく。
先輩が走り出したのを見て、僕もあとを追う。
どこからかピッと電子音がしたと思うと、“全方位”から熱風が襲ってきた。
1箇所だけじゃないのか…!!!
炎に包まれる。涼しかった風も熱くなる。
立ち止まって周りを見ても逃げ道はどこにもない。
死ぬ、死んだらもう生き返れない。