目に見えない壁の上に乗った瓦礫。
俺は意識で壁の形を操作して、瓦礫をコンビニの駐車場の端へと寄せる。
ブツッと音がして笧三の声が消えた。
イヤホンからは少し呆れたような多岐の笑い声が聞こえてくる。
トランシーバーをしまい、ここから動くべきか動かないべきか考えていると悪寒がして振り向く。
すると、そこには…
ぬいぐるみを片手で鷲掴みにして、溜息混じりにトランシーバーに話しかける代々木。
多岐が言っていたのは代々木のことか…
数歩下がると、代々木はトランシーバーをしまい、持っていたドラゴンのぬいぐるみを持ち直す。
おい、と代々木がぬいぐるみに声をかけると代々木の顔を見たドラゴンは尻尾を振り、俺を見る。
──── 結界。
目に見えない透明の壁がドラゴンのぬいぐるみが吐いた炎を防ぐ。
ぬいぐるみは代々木の元を離れて俺に襲いかかって来るが、壁によってそれも阻まれる。
完璧、最強なんて存在するのか。
どんな物にも何かしらの欠点があるものだ。
ドラゴンの口の中が赤く光る。
結界で身を守ろうと意識した時、耳にしていたイヤホンからザザっという音が聞こえてきた。
もう1人?誰だ、碑賀か?それとも四月一日か?
赤い光は大きくなって一気にこっちに向かってくる。
再びその攻撃を結界に受けようとした時…
炎は向きを変えて代々木に襲いかかる。
ドラゴンが吐くのをやめるとその炎を鋭い爪で切り裂いて代々木は何とか守られていた。
この能力は…
トランシーバーを片手に持ち、片方の手の指先を代々木に向ける笧三。
トランシーバーをしまうと、笧三はコンビニの端にある瓦礫と俺を見比べた。
ドラゴンの攻撃を笧三が全て他の方向に動かす。
その間に俺は瓦礫の前に行くと、瓦礫の下に結界を張ってその結界を上に持ち上げてみた。
結界をさらに上に持ち上げる。
結界の端からパラパラと降ってくる瓦礫の破片は腕で守るしかない。
結界を解除する。
大きな瓦礫が降り注ぐ中、笧三は腕を前に出すと指を瓦礫に向けた。
片方の指先は真っ直ぐ代々木を。
もう片方の指先は素早く振って代々木を。
…浮いた全ての瓦礫が代々木を全方位から襲う。
ボコオォォォォォォォン!!!!!!!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。