第22話
XXの開花 ⅩⅩⅦ
多岐先輩の言葉に龍が返事をしたと思った途端、龍はその場に膝を着いた。
長い説明に一霖が混乱し始めているのを見て慎が軽く一霖の頭を叩きながら笑う。
瞼を閉じて手を地面に着け、ボソボソと呟く龍。
見ていると体を地面に対して垂直に保つことだけで精一杯になっている気がする。
龍の言葉にユリは数秒笑顔のまま悩むと、龍の相手である多岐先輩を見た。
ユリが穴の空いたポップコーンの箱の底に手をやる。
そして、投げたのは…拳銃だった。
フィールドに落ちた拳銃を拾い上げた捺袮は少し歩くと龍の目の前に拳銃を置く。
拳銃を手にした龍は劣勢な状態にも関わらず笑った。
龍は笑って銃口を自分の耳の穴に向けていた。
狂っているのか、正気なのかは分からない。
でも、その目は真剣で本気でやる気だというのは見て取れる。
パァンッ!!!!
自殺をするとは思わなかったのか、東は立ち上がり大声をあげた。
隣で目を塞ぐ一霖に下を向いて耳を塞ぐ呉さん。
そして…………珍しく笑った千早…?
愉快そうに笑う千早が俺の頭を掴むと強制的に龍を見るように向きを変えた。
目を閉じようとした寸前、見た光景に俺は閉じようとしていた目を見開く。
俺が見たのは何故か頭を撃ち抜いたはずの龍が走って多岐先輩に向かっている姿だった。
そうか、そういうことか。
龍は少しでも失敗したら撃ち抜いて死ぬ可能性を見越した上で"命懸け"で多岐先輩の能力を攻略した…
確かに治せば平衡感覚も戻るだろうけど……
もう龍に多岐先輩の能力は効かない。
崩れそうになる度、龍は耳を撃ち抜いた。
2人の距離が詰まった時、多岐先輩の表情に諦めの色が現れる。
多岐先輩の降参と同時に倒れた龍。
審判員である捺袮が堂々とため息をついた。
苦笑しながら起き上がった龍。
凄い気分が悪そうで多岐先輩が首を傾げる。
龍が頭を傾け、指を突っ込むと耳の穴からポロポロと銃弾が何発も出てきた。
それを見て多岐先輩は固まるが、龍は気にしてないのか冗談っぽく笑い…