多岐先輩の答案を写し終わり答え合わせをしてもらって席に戻ってきた東。
安心したような表情を浮かべていたが、その表情はすぐに変わり申し訳なさそうに多岐先輩を見ていた。
悪い意味でまだ解けていない仲間。
照れ臭そうに一霖が笑ったところで、四月一日君の答えを写していた辻君が無言で立ち上がる。
笑ってはいるもののその笑顔には別の感情が混ざっているように見える。
特に何かを仕掛けることなく辻君は席に戻った。
一人、また一人と数が減っていく。
段々と精神的に追い詰められていく中、次に立ち上がったのは…
自信満々の代々木先輩から答案用紙を受け取り、軽く頷きながら内容を確認するユリ。
すぐに確認し、答えが合っていたのかユリの笑顔は明るくなる。
そう言って、席に戻る代々木先輩。
この問題を途中式飛ばして解くとかどういう頭をしているのか俺には分からない。
あぁ、早く解かねぇと…って、同じこと何回考えているんだ俺は……
さっきの俺みたいに堂々と手を挙げて大きな声で宣言した成瀬さん。
勿論、ユリは困ったような驚いたような顔をする。
残された俺と一霖はユリがヒントを出すことを願いながらユリと成瀬さんのやり取りを見ていた。
出せ…ヒント、出せ…!!
ユリはうーとかえーとか言うと、仕事を押し付けるように隣に立っていた捺祢の背中を叩いた。
暫くは無視していた捺祢だが、しつこさに諦めたのか本を閉じると成瀬さんの机まで行くと答案用紙を覗き込んだ。
ユリに指示され、捺祢は成瀬さんの答案用紙にヒントを書き込むと前へと戻った。
黒板にヒントを書くと思っていた俺と一霖の視線に気付いたのか、ユリは俺達を見るとニッと笑う。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。