第11話
XXの開花 Ⅴ
ユリが楽しそうに手を叩く。
相変わらず急かすユリ。
それに応えるように外野席から2人が立ち上がって戦う地へと向かう。
諦め疲れ切った表情でドラゴンのぬいぐるみを抱く代々木先輩。
そして、もう1人はおそらく辻君の先輩と見られる真面目そうな先輩。
手を振る成瀬さんに代々木先輩が呆れたような顔でドラゴンの手を動かして手を振り返す。
捺袮がいつも通りの溜息を零して悩み始める。
温かい笑みで笑いながら酒葉さんが言う。
そんな話をしていると、いつの間にか戦いが始まっていたのか低く唸るような声が響いた。
代々木先輩が抱いていたドラゴンのぬいぐるみが突然動き出し、空にすっと浮く。
ボオオォォォォォォッ!!!!!
熱風が吹いてきて俺は思わずむせる。
一瞬何が起きたのか分からなくなった。
赤く燃え上がる炎を見て表情が引き攣る。
宙で小さな翼を動かして飛んでいる見た目は可愛らしいドラゴンのぬいぐるみ。
口から火の粉が出ていて、今の炎の犯人がぬいぐるみだということは一目瞭然だった。
深海先輩が推測を話す。
炎が小さくなってくると、フィールドの端にいた能力の持ち主である代々木先輩もまさかの力に驚いている様子だった。
四月一日君が指した先には四角く焼けていない綺麗なフィールドの中心に立つ国木田先輩。
様子から見て、防いだというよりも何かによって守られたといった方が適切だ。
眠そうに欠伸をする捺袮を中心に半径2〜3m程は被害が無く、それより外は燃えて黒くなっている。
ゲームの審判は死なないように元から設定されているのか?それとも偶然か……
持っていた生徒手帳にメモをする千早と試合を見ながらも他のことを考える素振りを見せる深海先輩に俺達は顔を合わす。
知ることが出来れば、相手が考えている間に先制攻撃を仕掛けることが出来るってこと…
確かに他の人も大事だけどそっちも大事だな。