捺袮の指パッチンの音と同時に目の前の景色が学校の体育館から変わった。
ここは………競技場か…?
トラックの内側に立っていた俺達。
周りを見ると、俺達と同年代と思われる男女が何人もいて、やって来た俺達のことを見る。
手を叩き、嬉しそうに前に立つユリが笑う。
その横では次のゲームの準備か、捺袮がプリントの枚数を数えていた。
めんどくさそうに溜息を零しながら、捺袮がプリントを1人2枚ずつ配っていく。
1枚には次のゲーム。
もう1枚には俺達全員の生徒写真で写真の下にはそれぞれの名前、学年が書いてあった。
──────────────────────
第1ゲーム『個人戦』
・自分の能力を試す為のゲーム
・1VS1でのタイマン
・降参有り
・相手が死亡、戦闘不能、または降参で勝利
・能力以外にも外野に影響が無ければ、何を壊して
も良し
・基本、外部からのコーチングは禁止(応援はOK)
──────────────────────
色々と不明要素が多い内容のゲームにみんなが気難しそうな表情を浮かべていた。
慎が横でそんなことを呟いていると、はいは〜い!質問!と元気な声と共に一人の男子生徒が挙手。
えっと、確かこっちのプリントに名前が……
ユリが口にした名前と同じ名前を見つけると、写真と本人を見比べる。
どうやらこれには嘘がないようだ。
ほとんど質問の答えになっていないユリに呆れたのか小さな溜息をつくと、捺袮が言葉を加える。
そう言うと、ユリと捺袮は1つずつ袋を手にして、両端から順番に引かせていく。
クスクスと俺を馬鹿にするような笑みを浮かべ、俺に袋を差し出す。
ほんと、嫌な奴だ。
袋の中に手を入れる。
紙の感触が手に伝わり、適当に1枚を引いた。
紙を開くと『9』と印刷されていた。
俺の呟きに反応した辻君が声をかけてくる。
そして、持っていた9の紙を俺に見せてきた。
サラリと言った言葉に俺は戸惑う。
本人は何とも思っていないのか、戸惑っている俺を見て、不思議そうに首を傾げる。
こいつ、ちょっとヤバいんじゃ……
前で袋を持った捺袮が冷たい目で俺を見る。
その視線が辛くて、スグに紙を引く。
横で見ていた一霖が仲裁に入ってくれる。
辻君ははいは〜い、と特に反論することも無く同じ学校の人の元へと戻って行った。
だね〜、と一霖が苦笑混じりに言ったところで、全員が引き終わったらしくユリが注目を集めるように手を叩く。
能力が何だろう、考えながら俺は一霖と外野席へと向かう。
超能力と言っても様々な種類がある。
今回も生き残らねぇと……
一霖は能力を才能って言い換えたら…と言うと自分の両手をぼっと見つめて、ふわりと笑った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。