第52話
XXの時間 Ⅱ
映画館から景色が変わり、次に俺達がいたのは特に何の変哲のない教室だった。
教室には机が置かれていて、シャーペンと消しゴムが綺麗に並ぶ。
ユリが適当に座って座ってー、教卓に向かいながら言い、その指示に従って各々が椅子に座る。
一霖、龍の間の席を選んだ俺は椅子を引いたところで顔を上げた。
前を見ると同時に口から拍子抜けた声が漏れる。
今さっきのゲームまで私服を着ていた2人は制服姿に変わっていた。
別に制服を着たくらいじゃ、そんな驚かない。
着ている制服の学校に驚かされたのだ。
何で俺達と同じ制服を着ているのか、と考えていると隣からえ?と不思議そうな声がした。
“音羽君”と言われ、俺はやっと会話を思い出した。
そうだ、アイツ、学校に一度も来ない“音羽君”か…
てか、来ないなら何で入学したんだろう…
ユリの言葉を全て流した捺祢がプリントを一人一人の机の上に置いていく。
不満そうに頬を膨らましたユリはあ、と呟くと教卓の中から一枚の紙を内容が見えないように裏返して俺達に見せた。
死んでもしらないけどね、という意味を込めたような意地悪な笑みを浮かべると、ユリは教卓に紙を置いて椅子に座る。
配っていたプリントを丸めて頭を叩いたのか捺祢は俺達を見て、溜息を吐きながらプリントの形を戻して裏返しで机に置き、前へと戻って行く。
何で一番声が大きかった一霖は叩かれないんだよ…
そんなことを思い、一霖を見る。
俺の視線を感じた一霖は目が合うなり、笑って口元をどんまいです、と動かしピースをしてきた。
こいつめ……
カウントダウンの数字と共にユリが指を折っていき、立てている指が無くなったと同時に教室にチャイムが鳴り響いた。