始まりの宣言をしたユリを何故か眺めていた俺だがその本人に言われ、俺達は体育館を出た。
千早と深海先輩の意見もあり、俺達は放送室へと向かうことになった。
その途中、慎が思い返したようにあの毒入りカレーの話を始める。
パンっと手を叩き、一霖が音羽君と名前を口にした途端、全員の歩く足が止まった。
はぁ…、とため息をついた千早。
再び歩き出した俺達は放送室の前までやって来た。
すると、そのドアには張り紙がしてある。
「今回は誰でもいいから開けてね!」
俺がドアを開けると放送室の中にある机には1枚の紙を傍らに置くユリが暇そうにスマホゲームをして遊んでいた。
入った途端にガチャリと勝手に鍵が閉まる。
ユリがスマホをポケットにしまい、机から降りる。
すると、明るい笑顔を俺達に向けた。
持っていた紙をユリが俺達に見えるように向ける。
そこに書いてあったのは…
《問題》
ユリは殺したい程憎い人間がいる。
私だったら殺したい程憎い人いる?みたいな?と紙を見ながら呟くと、ユリは再び俺達を見る。
言われてみれば…となるような深海先輩の鋭い質問にユリがついさっきまで座っていた机の中に手を入れると、8つのスイッチを取り出した。
これが霙ちゃん…で、これが柊也君…と名前を呟きながら俺達全員にスイッチが配られる。
作りは2つの方向に動かせる単純なスイッチ。
それぞれの先には〇と✕が書かれている。
指で丸を作って笑う。
そして、時間無くなるし、早く意見聞いたら?と少し急かしたように言う。
そう言い残すとユリは放送室から立ち去った。
四月一日君が掌を俺達に見せてくる。
俺は自分の掌を見るが、比べ物にならないくらいに四月一日君の掌は真っ赤になっていた。
よく見ると、体育館の時よりも赤く見える。
千早がポケットにスイッチを入れる。
それを見た他のみんなも背を向けたり、千早みたいにスイッチをポケットに入れた。
俺も片手の中にスイッチを納め、空いてる方の手の指でスイッチを摘む。
あのユリの言葉は真実か…それとも嘘か……
もし、XXゲームに憎い人がいるとしたらあの場で真実を言う可能性が高い。
でも、このゲームに憎い人がいない、または元から憎い人がいないとすると〇と✕は半々と言ったところになるはずだ。
………なら、可能性が高い方に俺は賭ける。
俺がスイッチを〇の方に倒したところで放送室の鍵が開いた。
深海先輩の言葉に閃いたらしく一霖が手を叩く。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。