呉さんを信じて俺は✕を押す。
最後だったのか押すと同時に扉は開き、俺は呉さんを背負うと廊下へと出た。
すると、酒葉さんが…
その言葉を聞き、立っている全員は固まった。
クソっ…こっちは動きにくいってのに…
何処だ?まだ問題を受けていない教室は。
今までの流れ的に普通教室というのは考えにくい。
一体、何処が…
深海先輩にどんどん疲労が溜まっているように俺には見える。
心の相談室から普段なら3分もあれば辿り着ける体育館に10分くらいかけて歩いた。
体育館の扉には張り紙。
『またまた誰でもいいから開けてね!』
本来なら俺が開けに行くが、呉さんを背負っている以上落とすなんてことがあってはいけない。
一霖が張り紙がされている体育館の扉を開くと、壇上から脚を投げて座るユリの姿。
そして、体育館の真ん中で俺達を待っていたのか立っている捺袮の姿があった。
真ん中まで行くと、俺達が揃ったことを確認した捺袮が持っていた紙を読み上げる。
そう問題を言うと、俺達に見えるように紙を見せて考えが読み取れない目で○か✕か、と付け足す。
捺袮が紙を唯一、手が空いていて一番元気そうな一霖に渡したのを見ると壇上のユリがこっちに来た。
思い出すように愚痴愚痴と言う捺袮。
やっぱり、全部こいつかよ…
ユリが当たり前のように出した名前の中にまだ症状の出ていなかった慎があり俺は思わず、振り返る。
そこには体力の限界なのか、息が荒い慎が四月一日君を背負ったままその場に座り込んでいた。
慎がははっ、と苦笑を浮かべる。
時間が無いことを改めて思い知らされた俺は問題の対象である捺袮を見た。すると…
耳元から掠れた呉さんの声が聞こえてくる。
それを聞いた呉さんから静かな笑い声。
スイッチを片手に取ると、もう片方の手で包み込んで俺に見えないように押した。
そう言うと、呉さんはまだ気を失ったのか手からスイッチを落とした。
千早の言葉に急かされ、呉さんに簡単だと言われ、数秒後に俺が押したのは○だった。
酒葉さんの言葉に端末を見ながら笑ったユリがさてと…と言葉を繋げる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!