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第7話

XXの為に Ⅹ
四月一日わたぬき 柊也とうや
僕と本能寺先輩以外に毒の症状が出始めた人、いますか?
歩いている途中、ふいに四月一日君がそう聞いた。


千早も周りを気にする中、症状が出たと名乗り出る人は誰もいない。
俺が横目で深海先輩を見るも、本人は気付いておらず、名乗り出る様子もなかった。


深海先輩…
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
…まっ、仮にいたとしても言い出しにくいだろうし、別に動きに支障がないならいいんじゃない?
壁に手をつきながら、千早が言う。


確かに歩きにくそうな千早や、吐血に眩暈、吐き気といったかなり深刻な状態になっている四月一日君に比べたら深海先輩はまだまだマシだろう。
……四月一日君みたいに隠していたら別だけど。
少し空気が重くなったまま、俺達は体育倉庫へ。
楠木くすのき しん
じゃ、ここは陸上部である俺が……
くれ 葉月はづき
それ、関係あるんですか?
楠木くすのき しん
呉が開ける?
くれ 葉月はづき
い、いや、私の出番はまだかな。
千島ちしま 瑞樹みずき
今開けなくても、次に開けるからあまり変わりはないけどな。
くれ 葉月はづき
心の準備があるのっ!
頬を膨らまして拗ねた呉さんに俺は苦笑を浮かべ、ごめんごめんと言う。
酒葉さかば みのり
結局、どっちが開けるんですか?
楠木くすのき しん
女子が嫌がってんなら俺が!
ドヤ顔で言い、慎が倉庫の扉を開ける。
中は相変わらず埃臭い倉庫で物が乱雑している。
問題らしき紙は倉庫の奥の方に糸で吊るされていた。
千島ちしま 瑞樹みずき
今回も悪戯無しか…
背中越しに施錠の音を聞きながら、俺は紙に手を伸ばす。
深海ふかみ みぞれ
──── 待って、千島君!!
千島ちしま 瑞樹みずき
え?
突然の呼び止める声に反応できず、俺は問題用紙を引っ張る。
紙とは思えない重さが手にかかったと思うと、目の前の糸がなくなってその代わりに何かが俺に降ってきた。
千島ちしま 瑞樹みずき
んだよ…これ…っ!
酒葉さかば みのり
煙たいです…!
みんなが大きく咳き込む。
粉っぽさと臭いからして多分、ラインカーに入れる白い粉。


それが俺に降ったってことは……
千島ちしま 瑞樹みずき
ユリ、アイツ…!!!
くれ 葉月はづき
ちょっ!?四月一日君、大丈夫!?
四月一日わたぬき 柊也とうや
だ、いじょう…ぶ…です……。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
あんた、血が……
振り返ると、白っぽい視界の中に赤が見えた。
四月一日君が口を押さえているが、咳き込む度にその指の間から赤い血がどんどん溢れている。


やばい、と思い俺は問題に目を凝らす。
千島ちしま 瑞樹みずき
も、問題!楠木慎は元ヤンキーである!慎!さっさとどっちか言ってくれ!
楠木くすのき しん
✕!
慎が✕と言ったと同時に俺は✕のスイッチを押す。
俺が押してから、数秒後に鍵は開いた。
体育倉庫から出ると、四月一日君が水道までふらふらと歩いて口をすすいで、呉さんがその介抱をしていた。
深海ふかみ みぞれ
想像以上に効くのが早いですね…
酒葉さかば みのり
急がないと、やばいんじゃ…?
福冨ふくとみ 一霖いちりん
それより瑞樹、ちょっと洗ってきなよ。それだと瑞樹がいるだけで四月一日君が危ない。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
全身真っ白なんだからブレザーも叩いてよね。ズボンはまぁしょうがないけど。
一霖と千早に言われ、俺はブレザーを脱ぐ。
紺のブレザーは粉のせいで真っ白になっていた。


いろんな意味で嫌な嫌がらせだ。
ブレザーを叩き、顔を洗おうとYシャツの袖を捲る。
その瞬間、俺は目を疑った。


腕が真っ赤になって、かなり腫れていたのだ。
千島ちしま 瑞樹みずき
……。
もうとっくに俺にも毒が回っていた…?


痒い、動きにくい、苦しい、とかの感覚は全くなかった。
だが、どう見てもこの腫れは毒のせいだとしか思えない。


このまま毒が回っていると気付けなかったら?
俺は突然、逝ってしまった可能性もあったってことに…。
もしかしたら全員既に症状は出ていて、気付いていないだけかもしれない。
四月一日君や千早みたいに分かりやすい症状ではなく、見て初めて気付く俺みたいな。
千島ちしま 瑞樹みずき
…取り敢えずは隠す……。
聞こえないように呟き、洗うと袖を直し、ブレザーを着た。
千島ちしま 瑞樹みずき
お待たせ。
酒葉さかば みのり
次は心の相談室とかどうですかね…?教室に入るのかは分からないし、何となく思いついただけなんですけど……。
本能寺ほんのうじ 千早ちはや
あいつならやりそう…。心の相談室に早く行こう、そろそろ歩くの辛くなってきた。
四月一日わたぬき 柊也とうや
僕も結構…辛いです……。
そう言うなり、2人は心の相談室へと向かう。
当たり前だけど切羽詰まっているんだ。


俺もそのうち…
……いや、暗く思うな。前向きに考えろ。

俺達は絶対に生き残る。
腫れた腕を握ると、俺は他のみんなと2人の後を追ったのだった。