俺達の短い会話が少し面白かったのか、隣に座る一霖が小さく笑う。
理由はあえて聞かなかった、別に聞いてもよかったが戦闘向けの能力ではない一霖にはこの後の試合の対策を考えてほしかった。
このまま降参ばかりしていると死ぬ可能性が出てくる。
周りを見て呉さんが呟く。
確かに周りに同じ制服の人はいない。
一人で勝ち上がったのか……?
仲間を馬鹿にされた感じがして、俺はユリを睨む。
どうやらポップコーンがなくなって暇になったらしい。
ポップコーンが入っていた入れ物をクルクルと回しながら、ユリは説明を始めた。
馬鹿っぽく見えていたユリが突然化学的なことを言い出し、俺と四月一日君は呆気に取られる。
こいつ、こういうこと言えたのか……
正直に関心した。
天才だから!しか言えないと思っていたが、本当にこいつは天才の可能性があるかもしれない。
そう笑われて俺はスグにフィールドを見た。
まだ慎は倒れていない。
まだ慎は戦っている。
……だが、攻撃は相手に全く当たらない。
もしユリが言っていたことが本当なら…この試合、慎に勝機はあるのか?
…いや、仲間を信じないでどうする。
あの慎だぞ?
難しいことだってきっとやってくれるはず…
何の根拠もない考えに俺は段々とモヤがかかる。
仲間を信じる俺と現実を知る俺。
誰にも聞こえない声でそっと俺は呟いていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。