無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第51話

XXの実力 ⅩⅦ
俺が見たのは交差点だった。

懐かしいような懐かしくないような…そんな交差点。
人が通り、車が通り、特に変哲のない光景。

一瞬だけ視界が暗くなる。
何となくで目を擦ると視界に再び交差点が現れる。
でも、それはただの交差点じゃない。

道路は真っ赤に染まって ───────
千島ちしま 瑞樹みずき
うわっ!
不吉な光景に俺は“目が覚めた”。
周りは静かで鳥の声が聞こえてくる。
血と土と花の匂いが混ざり合って気持ち悪い。


ゆ、夢…?さっきの多分、血だったよな…

…………あれ?
千島ちしま 瑞樹みずき
何で俺、生きて……
腹を触ると激痛が走り、小さく呻き声を漏らす。
制服は血でびっしょり濡れているけど、あの時のように血が流れ出す感覚は無い。

『肝臓をやった。個人差はあるが、1分で意識不明、5分で失血死と言ったところだな。』

失血死、捺祢はそう言った。
でも、俺は今生きている。これも夢なのか?
千島ちしま 瑞樹みずき
そうだ、慎…現実なら慎がいるはず…
痛む腹を押さえて立ち上がる。
重い足を動かして俺が慎と掘っていた穴に近付くと、そこに慎はいた。
千島ちしま 瑞樹みずき
慎!俺、何で生、きて……
段々と語尾が小さくなっていく。
慎はダルいめんどいと愚痴を漏らしながらもやることはちゃんとやる奴で手は常に動かす。

どうして気付かなかったんだ。
今の状況で静かなこと自体がおかしいって。


慎は穴の中で血塗れになった状態でシャベルを持ちながら寝ていた。

1ミリも動くことなく、寝息をあげることもなく、まるで……死んでいるかのように。
千島ちしま 瑞樹みずき
は、はっ…おい、冗談よせよ…。
現実逃避するように乾いた笑いを零しながら俺は穴の中に入ると、寝ている慎の横でしゃがんでそっと手を慎の口の前に持っていく。
手に何も感じない。

息をしていない。


つまり…死んでいる。
千島ちしま 瑞樹みずき
……。
叫び声も上げられなかった。
何も言わずにただただ現実を受け止めた。
悲しい中、何処か複雑な気分もあった。
千島ちしま 瑞樹みずき
………お前、何で俺を治したんだよ…自分の傷を治せよ…お前なら、慎なら簡単だろ…自分の出血を止めることなんて…なのに、どうして俺を治して死ぬまで穴を掘ってんだよ……
本物の馬鹿だ。
命の恩人には申し訳ないが、慎だからこそ言える。

馬鹿、本当に馬鹿。
自分の命を優先すれば良かったのに……


ふと慎が何か持っていることに気付く。
手を伸ばして取れたのはまだ乾ききっていない血のついたシャーペンと慎の生徒手帳だった。
千島ちしま 瑞樹みずき
何でこんなもんを…
特に深く考えることなく、ページを捲る。
すると、ノート仕様になっているページに少しいつもより汚い慎の字が並んでいた。

「瑞樹、お前が絶対に目覚めるって信じて俺は最期に命燃やして穴を掘り続けっからな。」
「昔グレまくってた、嘘ついてすまん。」
「どうせならアオハルしてみたかった。」
千島ちしま 瑞樹みずき
慎……
俺を信じて死ぬまで穴を掘り続けたこと。
本当に感謝しかないし、凄い申し訳ない。

次に元ヤンじゃないって嘘をついたこと。
まぁ、慎も慎なりの考えがあって言ったんだよな…
○は5個って言ってたから1個が慎であと4個…

アオハルしたかったこと。
…そこに関しては俺からは何も言えないわ。
千島ちしま 瑞樹みずき
らしいな…
これで終わりだと思ったが、ページの右下に血が指の形についている。どうやら続きがあるらしい。

次は何が書いてあるか、と考えながらページを捲る。
千島ちしま 瑞樹みずき
……“俺は死ぬから本能寺に殴られるのは瑞樹な”…って……
俺、何も愚痴ってないんだけどな……
千島ちしま 瑞樹みずき
ああ、分かった。生きて帰ってお前が千早に殴られる予定だった分、俺が代わりに殴られてやるよ。
慎の生徒手帳とシャーペンをポケットに入れる。
そして、俺は慎が持っていたシャベルを取った。

まだ悲しみたいし何ならこの言葉にできない感情を晴らすように何かをぶっ壊したい。
でも、それは今俺がやるべきことじゃない。

今やるべきことは穴を掘ること。
慎が死ぬまで掘った穴を完成させること。
悲しみも怒りもその後だ。
千島ちしま 瑞樹みずき
…慎。絶対に俺は負けないから安心して天国で運動するなりバイクで爆走するなり自由に生きろ。
寝ている慎にそう告げると俺はシャベルを地面に突き立てたのだった。