第49話
XXの実力 XⅢ
花の匂いを撒き散らすユリが手に持っているのはシロツメクサの冠とハナズオウの枝。
試合は閃光弾を投げられたユリがめんどくさくなったのか拗ねたのかスグに降参したことで終わった。
戦う気満々だった成瀬さんは少し不服そう。
慎の言葉に笑いながら一霖の制服の胸ポケットにハナズオウの枝を刺したユリはあ〜、面白い面白いと目元の涙を拭うと捺祢を見る。
捺祢が箱を横に揺すると、俺の前に差し出した。
そういう遊び心とかあるんだ…
ルールに服従している捺祢がらしくないことをしてきて驚いたものの俺は箱に手を入れると紙を2枚取る。
そして、もう片方の手で残りの2枚も取るとそれを捺祢に渡した。
ずっと不運でいじってくる千早が捺祢の手から紙を取るとユリと一緒に紙を見始める。
紙を見て、数秒間静かになるとユリはまた笑い出して千早は俺を見てニヤリと笑った。
最悪だ。
東だけは敵に回したくない、って出会った時に思っていたけど…見事にフラグ回収。
目の前でユラユラと揺れる花が凄い気分を煽ってくるが、こいつらは何も悪くない。
前に咲いていた花の茎を必死によじ登るてんとう虫をぼんやりと眺めながら返事をしていると、ふとさっきの映画館での会話が脳裏を過った。
「まぁ、敵になったらミッションで勝ちに行け。俺は目標を殺しに行くから。」
自然な流れで愚痴った慎。
一応、最後の一言が聞こえないようにはしたけど、相手が相手だし手遅れだろう。
千早、そろそろ腹やめて顔面に攻撃しそう…
…まっ、慎なら大丈夫だろ。丈夫だし。
呑気?なことを考えているうちにてんとう虫が花に辿り着き、空に飛び立つ。
そんなてんとう虫を見送り終わった俺はトランシーバーをしまって立ち上がるとスコップと柔らかい土を探しに歩き出したのだった。