第46話
XXの実力 Ⅶ
そもそも俺の能力はサポート向け。
俺と代々木のドラゴンなら代々木のドラゴンの方が圧倒的に攻撃に向いている。
コントロールが出来ない時があるのが難点だけど。
能力無しでナイフを持った近距離戦となると、俺から攻撃を仕掛けない限り決着がつかない。
…殺そうと思わなくても、代々木が泳ぎ切るまでの時間稼ぎが出来れば良いのか。
『目標が死亡、戦闘不能、降参をさせるor先にミッションクリアしたペアの勝利』って書いてあったし。
取り敢えず、目標を探そう。
そう中央広場にある案内マップを見た時だった。
ニコニコと笑って近付いて来た林太郎。
俺は万が一と思い、結界を張りながら話を聞く。
最初に浮かんだ言葉は戦闘放棄。
こいつらしいっちゃこいつらしいけど…ペアである本能寺さんに盛大な迷惑をかけている。
敵が少なくなるのは助かるけど、迷惑は……
注意した方が良いのか、このまま「そうか」の一言で終わらせるべきかで悩んでいると、林太郎はいやぁと言葉を続ける。
…その通りだ。間違ってはいない。
ミッションをクリアしたり、暗殺を果たしたところで最後までに死者が出なければくじ引き。
勝っても負けても変わりはないだろう。
でも、だからと言って人を殺せば早いという林太郎はおかしい気がする。
注意しようと思った時にはもう林太郎の姿はない。
どうやら能力を使ったらしい。
少しモヤがかかりながらも俺は林太郎から聞いた自然エリアのサイクリングロードと向かった。
本能寺さんと交戦中の彼は俺を見るなりポツリとそう呟いた。
火が舞い襲いかかってくる中、溜息を零しながらナイフ1本を手にし、するすると避けていく姿はまるで碑賀君のように未来が見えているようだ。
本能寺さんの懐に入ると、彼は女子だろうとお構い無しに鉄のメリケンサックをつけた拳を突き出した。
呻き声と共にふらついた本能寺さんは膝を着く。
そして、ゆらりと揺れた彼と目が合ってしまった。
俺は数歩下がると結界を張る。
結界を壊して攻撃してきそうな気がしてきた…
代々木、何でもいいからさっさと泳ぎきってくれ。