全く進まない話し合いをずっとし続ける龍君と慎君に私は思わず溜息を零す。
折角、瑞樹君達の居場所見つけたのにこんなことしてると動いちゃうかもなぁ…
そんなことを思いながら私は2人を見て再度溜息。
私だって試合から逃げたい気持ちは凄いあるけど、それだと人任せ過ぎる。
嫌なことはみんなで分け合わないと!
でも、そうだとしても遅すぎ…
バキッという音がすると私の体は空中にあった。
ついさっきまでいた躑躅川ビルは後方に見え、落ちる前にと視力を上げて瑞樹君達を探す。
んっと〜……ゆうらぎ公園、かな?
ビルを踏み台にどんどん公園に近づいて行く。
ちょーっと破壊してるのは拓君に比べたら凄いマシ…だよね?うん、きっとマシ!!
ドゴッ!!!
ヒーローみたいにかっこよく登場するつもりが何かが違ったのか、瑞樹君の背中にドロップキックをする形で登場してしまった。
あっと思った時にはもう遅い。
瑞樹君の体はぶっ飛んでしまい遥か彼方へ………
実ちゃんが植物に乗って飛んで行った瑞樹君を追いかけて公園には林太郎君と私だけに。
瑞樹君が飛んで行った方向を見て笑う林太郎君。
これ、倒しちゃった方が良いのかな…なんて考えているとそう言えば!と林太郎君が私を見る。
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葉月ちゃんが行ったあとも俺はずっと慎が腕を切るかどうかでもめていた。
あくまで俺に出来るのはサポート。
治癒は攻撃として使えない。
やっと分かってきたのか慎が頭を抱える。
慎の視線の先を見ると確かに何かがこっちに向かって飛んできていた。
最初は葉月ちゃんかなと思ったが、よく目を凝らすと奥の方に緑が見え、俺は苦笑する。
俺と慎は屋上の端まで後退。
すると、案の定瑞樹が屋上に思いっきり叩きつけられるように着地した。
さっきの緑色の何かも想像通り。
瑞樹を追いかけてきた実ちゃんの植物の色。
……あの林太郎君はいないのか?
ここにいないなら多分今、葉月ちゃんと2人っきりって可能性が高くなるんじゃ…
背中を叩きながら立ち上がる瑞樹に実ちゃんが戦う気満々の構えで話しかける。
戦う気満々の2人に対して俺達は溜息を零した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。