第75話

‥認めたくない‥
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2020/03/20 04:45
あなた「……でも、実際私のことも必要だと思ってくれてるって分かった時、嬉しかった。だから黒尾さんが言ったことも、あながち間違ってはいないんだと思う」


黒尾さんは私と目を合わせながら、掴んだ髪を撫でた。


黒尾「……来なければ良かったって、思うか?」


あなた「……思わない」


黒尾さんの瞳に写った自分がはっきりと見えるくらい見据えた。


黒尾「…………」



あなた「研磨くん、夜久さん…………監督やコーチも、音駒の皆に会えて良かったから。黒尾さんだって……だから、私は、来て良かったって思う。そりゃ黒尾さんは清水先輩に来てもらいたかっただろうけど__っ!?…………黒尾さん?」



ギュウゥゥ……



あなた「なに…………」




黒尾「…………黙ってろ」






ねぇ、黒尾さん……。




私のこと、嫌いなんじゃないの?




認めないんじゃないの?




どうして、私のこと抱き締めるの……?



黒尾𝓈𝒾𝒹𝑒.°



別に、嫌いだった訳じゃないんだ。



そりゃああの眼鏡ちゃんを呼んだはずが、アホそう顔をした女が代わりに来て、一丁前に「仕事ができる」宣言して、なんだコイツは、って思った。



ズカズカ俺たちの中に入り込んできて、それでも時折、寂しそうな顔をしてバレーを観る。


あぁそうだ、バレーを見る目は確かなんだよな、こいつ……。


研磨が認めるほどに……。



それでも。




……俺は、認めたくない。









俺にたてついてきて









いつの間にか周りから好かれて









タオルいい匂いだし









なんか飯超うめぇし









風呂で無防備に寝てるし









意外にけなしあうのが楽しくて









なんか夜になったら人が変わって









あることないことペラペラ喋るし









急に抱きついてくるし









朝になったらなんも覚えてねぇし









いつも通り俺の挑発に立ち向かってくると思ったら










泣き出すし










必死で隠していた俺の異変に1番に気づいて










こんな短い間に俺達のことちゃんと見て、理解して









こんなに良いマネージャー他にいない









そんなことは分かってる。







それでも認めたくない。









ただの、意地なのかもしれない。









認めたくない。









どうしようもなく












こいつに惹かれているということを__。

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