武田「それでは皆さん、気をつけて帰ってくださいね」
烏養「家に帰るまでが合宿だぞー」
小学校の遠足みたいなことを言われて送り出され、私はカゲくんと帰路についた。
あなた「…………ねぇ、カゲくん」
影山「あぁ?」
あなた「あのね、なんでずっと手ぇ握ってるの?」
校門を出て皆と別れてすぐに手をとってきて、それからずっとカゲくんは私の手の形を確かめるようににぎにぎしていた。
影山「……もうどこにも行かねぇように」
…………子供かて。
あなた「ごめんって。次からはちゃんと言ってからにするし」
影山「それじゃだめだ」
ぎゅぅっと、握る手に力が入った。
影山「「次」とかねぇから。もうずっと一緒にいろ」
あぁ。
1番身近に居たね、天然タラシ。
天然タラシってこんなに人数いて世の女の子よく生き残ってるよね……。
それでも、ふてくされた子供のようなカゲくんを見ているとほっこりして、笑うととても怒られた。
あなた「ただいm__って!!なに玄関に正座してんの!?」
家に着いてからもいっこうに離そうとしてくれないカゲくんをなんとか振り切って家に入ると、お兄ちゃんと徹くんが並んで正座していた。
2人は驚いている私の顔を見て涙ぐんだ。
及川「……お荷物、お預かり致しまs」
あなた「え、やだ。なんか気持ち悪い」
手を伸ばしてきた徹くんから荷物を遠ざける。
徹くんはもっと涙ぐむとまた正座し直した。
……え、なに?これ。
岩泉「……なにか、食いたいものはあるか」
あなた「え、ない」
岩泉「してほしいことは__」
あなた「今すぐそこからどいてほしい」
岩泉&及川「仰せのままに」
すぐに2人は正座したまま廊下の端へと寄った。
……なんか家入りにくいんだけど。
そこへ、エプロンを着たお母さんがいい匂いを漂わせながら扉を開けた。
岩泉母「あなたおかえり~ご飯できてるわよ~」
あなた「え、なにお母さんこの状況」
指差すと、苦笑した。
岩泉母「あなたに何回電話しても出ないってずぅっと騒がしくてね、それに今日の朝徹くんがかけた電話をとらずに切られたってもううるさいから座らせといたのっ」
あなた「うん、いい判断だと思うよ」
及川「あなた許してよ!!だって心配だったんだもん…………お願いだからブロックしないで」
岩泉「……合宿所までは乗り込まなかったんだ。感謝しろ」
あなた「徹くんだけ入ってよし。お兄ちゃんは明日まで座ってな」
及川「あなたっ!好き!!」
飛びかかってくる徹くんを叩きながらお兄ちゃんに言うと、すぐに焦って謝ってきたので許してあげることにした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!