影山𝓈𝒾𝒹𝑒.°
「影山ぁ!昨日見たぞ!凄かったなぁ!!」
教室に入った途端に囲まれた。
……昨日?試合か。
「おう」と軽く返してから、自分の席に座った。
朝からずっと、考えて離れない事がある。
「それより影山っ、未成年の主張何言うか考えたか!?」
……あぁ、そう言えばくじ引きで当たったな。
…………んなもんその時だろ。
影山「……いや」
「好きなやつとかいねぇの!?……ってか、ずっと気になってたんだけど岩泉さんとはどう言う関係なんだよ!」
……なんで急にあなた?
「それなっ!学校でもよく話してるし、昨日の試合もなんかやってたし!!気になるぞオラ!!」
影山「……?あいつは俺の_______」
俺の……。
……なんだ?
「?影山??」
影山「……なぁ。女が、男からの連絡先の交換を断るのってなんでだ?」
「はぁ??」
「単に嫌いなんじゃねぇの?」
影山「いや、違う」
あいつの性格なら、日向のダチからの頼みならOKするところだ。
でもしなかったのって、なんでなんだ……?
「他に好きな奴がいて、一途に想うって決めたからとか?」
影山「……"好きな奴"」
「そうそう!」
……あなたに、好きな奴?
……。
「断るのも勇気いるし、ぜってぇそうだよ!それか彼氏いるk_____」
影山「喋るな」
「理不尽じゃね!?」
……あなたに、好きな人なんか……ねぇよ。
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
小鳥遊「ほらっ、次ウエスト〜」
あなた「はーい」
メジャーをカタカタっと伸ばす小鳥遊さん。
いつも下ろしている髪をきゅっと高く結んで、真剣な眼差しで目盛りを見る。
あなた「衣装って……どんなのにするの?」
小鳥遊「ん〜?ほっそ、あとで肉食わそっと。知りたい?」
ボソッと何か呟いてから、ニシシと笑った。
あなた「……いや、今度でいいや」
嫌な予感がどんどん膨らんでくる……まぁでも、私が男装するのはいいか。ズボンくらい履くし。
月島くんが女装ってなぁ……。
月島くんの寸法は空き教室で山口くんがしているらしくて、小鳥遊さんは私のサイズを書き込むとメジャーをしまい、「うしっ」と小さく口を開けた。
小鳥遊「ね、どっちが攻めがいい?」
あなた「へ」
スケッチブックをパラパラとめくって椅子に座ると、シャーペンを指の上で回した。
「攻め」……?
あなた「え?戦うの?」
小鳥遊「あ、うん。やっぱいいや」
微笑してから鼻歌を歌いつつ何やら描いている。
コンテストは小鳥遊さんに任せるとして……。
綾乃「あなたー終わった?開けるよ?」
あなた「?うん」
入って来た綾乃は、自身の後ろを指差して動かした。
綾乃「お客さん」
・
訪ねて来たのは、菅原先輩と縁下先輩だった。
相変わらず周囲から目線を集めている菅原先輩は私に手を合わせる。
菅原「サッカー部がさ、今週末試合らしいんだよ」
あなた「……はぁ」
菅原「週末だけ、代わってくれねぇ?」
あなた「……はい?」
ちょっと話が読めない。
頭に大量のクエスチョンマークを浮かべる私を見てハハっと笑い、事の発端を話してくれた。
文化委員各学年1人ずつの、計3人。
文化祭実行委員として他校にイベントの参考にする為に足を運ぶらしい。
1年からはサッカー部の男子が行くことになっていたらしいけど、今週末だけ丁度試合があるため行くことができないと。
交通費はもう経費で払ってしまったらしくて、代役を立てたいけど他の実行委員は仕事が決まっているという話だった。
縁下「俺たちとあと1人1年ってなったら……やっぱりバレー部の奴が最適じゃないかって」
あなた「??山口くんじゃダメなんですか?」
菅原「嶋田さんと練習らしいんだよ……他のメンツは……まぁ、分かるだろ?」
大体察しがついて、週末の予定を考えた。
家事当番はお兄ちゃんに代わって貰えばいいし……まぁ、いっか。
あなた「分かりました。私で良ければっ」
菅原「良かった助かった〜っ!流石あなた!」
ふわっと笑って私の頭をわしゃわしゃ撫でると、「また詳しい事は連絡するな」と言った。
あなた「あ……、どこの文化祭に行くんですか?」
菅原「ん〜?あなたもよく知ってるとこっ」
青城の文化祭はまだ先のはずだし、ここら辺で文化祭あったっけ……?
首を傾げると、2人は顔を見合わせて微笑した。
なんだかそれが、とても含みのあるように見えて……。
嫌な予感は、こんな所で的中した。
菅原&縁下「音駒!!」
あなた「_________え"」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!