チュンチュン……
あなた「…………ん」
カーテンの隙間から差し込む光に、目を開けた。
眠い……二度寝したい。
寝返りをうとうとした所で、違和感に気がつく。
あなた「!!?侑、治!?」
両側で、抱きつくように寝ている2人。
シングルベッドだから2人とも窮屈そう。
そういえば……あれ、私昨日の夜……。
『夜はこれからやで』
あれ!?
なんでもう朝なの!?
昨日結局どうなったのぉぉぉ!?
あなた「ちょっ、起きて!!起きろぉ!」
両手をバタバタさせて殴ると、2人ともゆっくりと目を開けた。
侑「なんや……」
治「……おはようさん」
あなた「っじゃなくて!なに、何してるの!?」
治「……何って……?」
眠そうに瞼を擦る。
あなた「昨日…………その、えっと//」
口に出しづらくて躊躇っていると、侑が「嘘やろ……」とため息をついた。
あなた「……え?」
侑「忘れたんか?」
……やっぱり、え、ほんとに……?
絶望的な顔をした私に、2人は起き上がって頭を抱えた。
治「自分が寝るけぇ“途中止め”や」
あなた「と……「途中止め」?」
侑「ほんま……あのまま襲ったったらよかったわ(あんなん可愛過ぎて襲えるわけないやろが……)」
治「止めたって感謝せぇよ(後で現像しにいかんとな……スマホ持っとってよかったわ)」
はぁ……。
何はともあれ、今日で本当に最後だ。
あなた「部活行って良かったのに……」
駅まで送ると言ってくれて、ジャージ姿の2人と家を出た。
優子さんにもお礼を言うと、「またいつでも来ぃや」と言ってくれた。
侑「監督に行け言われたんや……(そうじゃのぉても送るけど)」
治「……着けてくれとるんやな」
早速着けたネックレスを見て、2人とも頬を緩ませる。
侑「ただ気に入らんのんは……その絆創膏やな」
あなた「……あんなんつけて道歩けるわけないでしょうが」
朝顔を洗いに行くと、またもやくっきりと痕がついていて。
絆創膏生活に逆戻りだ。
ぶつぶつ言っている侑を尻目に歩いて、駅に到着。
北「おぉ、来たな」
角名「おはよ」
あなた「!北さん……倫くんも!なんで」
駅で2人が待っていてくれて、出迎えられた。
北「送らせてや。ええやろ?」
言いながら、また私の頭を撫でる北さん。
今さらだけど……撫で方がちょっと菅原先輩に似てるんだよな……だから落ち着くのかな?
角名「今度こっち来る時は、俺の家に泊まってね」
あなた「それは約束しかねるかな……」
電車が来るまで、あと7分。
あなた「そろそろ、行かないと……」
本当はもう少しいられるけど、寂しさが増すだけだから。
侑「……また、会えるやろ?」
昨日の夜の勢いはどうしたんだ、ってぐらいの情けない顔をして言う侑に、思わず笑った。
あなた「うん……そうだね」
正直、絶対会えるという確信もなかったけど……。
あなた「じゃあ……」
立ち去ろうとして、ふと思い付いた。
会えるじゃん。
振り替えると、4人は不思議そうな顔をして首をかしげた。
あなた「春高!!」
その言葉に、ハッと目を見開いた。
あなた「兵庫県代表になってよね!」
侑「……当たり前や!」
そしたら……。
あなた「絶対、東京の体育館で、会おう!」
治「!……牛若、倒してきぃよ」
あなた「うん!」
親指をグッと立てると、ゲートの向こうの皆も同じように返してくれた。
絶対、春高で会うんだ!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。