?「俺は二口堅治。高2です」
あなた「岩泉あなた、高1です」
年上だったんだ……敬語使っててよかった。
二口「ならタメでいいかな?……あっ、これとかどう?似合いそう!」
あなた「あ、はい。どうぞ。……あの、やっぱり悪いので……乾いてきたし大丈夫ですよ」
二口さんは私のスカートをじっと見ると、「ダメ!染みになってるし」と言ってまた選び始めた。
なんだか楽しんでいるみたいで、さっきから選ぶ服もセンスがいい。
そういえば着てる服も、自分に似合う服を知っているかのようで……。
……あぁ私、なにやってるんだろ。
1人で映画見に行って、コーラかかって知らない人と買い物なんて……。
こんなことなら西谷先輩誘えば良かったかな……?
二口「ねっ、あなたはどれがいい?」
いきなり呼び捨てだし……。
あなた「えと、二口さんが選んでくれたので大丈夫です」
買うというのは決定事項のようなので、引き下がることにした。
あなた「お待たせ、しました……」
購入してくれた服に着替えて、柱のところに立っている二口さんに駆け寄った。
二口「おぉ!やっぱり似合ってんね。可愛い」
あなた「……あの、元のスカートよりも高かったし、やっぱり一部だけでも支払わせてもらえませんか?」
二口「だーめ!あなたの時間もらったってこともあるし、奢らせてよそのくらい」
あなた「……すみません。それでは__」
パシッ
立ち去ろうと踵を返した途端、手首を捕まれた。
……なに?
二口「ねっ、時間ある?」
あなた「ないです」
二口「嘘だねっ。ちょっとお願い聞いてほしくてさぁ」
あなた「……なんですか」
二口さんは再度にこやかな顔を貼りつけると、言った。
二口「俺の買い物に付き合ってよ」
二口「ごめんねぇ~付き合わせちゃって」
あなた「……いえ、服の値段の埋め合わせということで」
二口「さっきから全然こっち見てくれないじゃん~」
うるさいなぁ。
隣を歩く二口さんを、西谷先輩だと思い込む神業を思い付いたのだよ。
二口「ま、いいや。協力してもらうわけだしね」
……なんか言ってるけど、気にしないでおこう。
着いたのは、駅から少し離れたビルの4階、カラフルな内装のお店だった。
なに……ここ。
二口「ここ、グミ専門店っ。今キャンペーン中でさ、1人3種類に限りいくつか無料でもらえるんだよ!今日このために呼んだダチもこれなかったし、あなたよろしく~」
なんだ、そんなことか……。
てか、グミ好きなの?この人……。
まぁ私も嫌いではないけど……。
あなた「……それくらいなら__」
二口「あぁあと、カップルだったら貰えるの増えるんだよ」
東京のにゃんとか高校の主将の変態を彷彿とさせるいたずらっ子顔で言った。
___はめられた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。