1月6日 大会2日目。
朝はとても早起きだった。
自分で思っていたよりも慣れない環境、大会1日目の雰囲気に疲れていたようで、昨日は眠りについた記憶すらない。
気が付いたら仁花ちゃんの隣で目が覚めた。
ひとまず、2日目の準備を一通り済ませてバスに乗り込んだ。
「烏野ォーファイっ!」
「「「オ"イ!!」」」
「ファイッ」
「「「オ"エ"ーイッ!」」」
朝7時過ぎ。
体育館の周りでアップする皆の姿を段差に座って眺める。
……よし、調子は良さそう。
あなた「仁花ちゃん、私お手洗い行ってくるね。」
谷地「分かった!」
スゥ..と、真冬の冷たい空気を吸ってみた。
試合前のこの、なんとも言えない匂いが好きだ。
目を瞑ると、後方から烏野の皆の掛け声が聞こえてくる。
1人1人の声に耳を傾けてから、軽く自身の頬を叩いた。
___________大丈夫。
勝つとか、負けるとか。
そういう不安とかじゃなくて、だって今日の相手は……。
グイッ
あなた「!!!?」
トイレに入ろうとした所で、反対側から手首を引っ張られて足がよろける。
倒れ込むようにその手の主の胸元に顔が埋まって、驚いて上げようとした顔は大きな手によって押さえつけられた。
あなた「〜、?〜〜っ、!」
?「シィ…………。」
暴れる私を宥めるように後頭部を撫で、小さく黙るように合図してきた。
__________この匂い、知ってる。
「あれ〜?さっき絶対こっち居たのに!」
「やっぱり見間違いじゃない?」
「何の為に私たち早く来たのよ〜!」
「絶対近くにぃるはずなのにー_______、」
「………っ!………〜!」
壁の向こう側から聞こえてくる、若い女の子たちの声。
?「_______行った、みたいやな。」
あなた「〜っ、ぷはッ!!」
?「っ、すまん……!!」
ふっと緩んだ手から逃れようと、一気に頭を押し上げた。
同時に、気怠げな目が私を見捉える。
治「苦しかったか……?」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!