体育館に戻ると、数人だけ残っていた。
他の皆はご飯を食べに行ったようだ。
谷地「私達もご飯行こっ」
癒し満載の笑顔に、頷きそうになったところを抑えた。
あなた「ごめんっ、自主練付き合う約束してるから、先に食べてて?」
謝ると、少し落ち込みながらも「頑張ってねっ!」と言ってくれて、皆を見送った。
キュッ……
研磨「あなた、ゲームしよ」
あなた「っ、!」
後ろで服の裾を掴んだ研磨くんこ上目使いに心臓が跳び跳ねた。
ゲーム……したい、けど……。
木兎「ヘイヘイヘェイ!!あなた!俺らと第3体育館行こうぜぇ~!」
赤葦「ちょっと木兎さん……」
あなた「あ、あの……私は」
研磨「あなたは俺とゲームだからダメ」
赤葦「……ほんと珍しいね」
赤葦さんの目が、私を庇うように前に立った研磨くんと私に往復する。
木兎「俺の自主練付き合うだろ!?」
研磨「俺とゲーム、だよね?」
あなた「……えっと」
どっちも違うなんて言いづらいんだけど……。
ヒョイッ
あなた「________っ!?」
研磨「っ、リエーフ…………!」
困っていると体が浮いて、一気に目線が高くなる。
両脇の感触と研磨くんの反応で、リエーフくんが私を持ち上げたんだと分かった。
リエーフ「ダメっすよ先輩方、あなたは俺が予約してたんでっ」
研磨「リエーフ……離して」
研磨くんが睨むと、脇にあったリエーフくんの手が動いて片手で軽々と私を座らせるように抱き抱えた。
リエーフ「ダメです~」
研磨「……トス、あげないよ?」
リエーフ「えっ、!?」
そりゃ酷な話だ。
あなた「あ、あのね研磨くん……私、今日は元々リエーフくんと約束してたから、ゲームはまた今度でも、いい?木兎さんも……次の合宿の時にでも是非」
こんな高い目線から話すのはとても新鮮で気持ちが高ぶりながらも謝ると、木兎さんは渋々体育館から出ていく。
黒尾「研磨ぁお前も諦めろ。約束してたんならしょうがないだろ」
ポンッと研磨くんの頭に黒尾さんが手を置くと、研磨くんは少しだけ驚いているようだった。
研磨「クロ、どうしてそんなあっさりしてるの?」
黒尾「別に~?あなた、俺との約束も守れよな?」
木兎さんたちを追いながらこっちに目をやって来て、昼に言われた事だとすぐに分かって頷いた。
あなた「それで、リエーフくんはなんの練習?」
リエーフ「スパイク!!って言いたいけど、レシーブだ……」
とても落ち込んだように肩を落とすリエーフ君。
夜久「リエーフやるぞ!……って、あなた!?」
ボールかごを運んできた夜久さんが、私を見て目を見開いた。
あなた「あ、夜久さんと練習するんだ……。お邪魔してもいいですか?」
夜久「そりゃ勿論いいけど……てっきり黒尾達の所に行くのかと……」
?なんで黒尾さん……?
リエーフ「俺が前もって予約してたので!」
拳を突き上げて自慢げに言ったリエーフくんを見て、夜久さんは「リエーフよくやった!!」と頭をガシガシ撫でている。
私が自主練付き合っても特にできることないのになぁ……どうしてそんなに誘ってくれるんだろ?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!