第305話

‥本気じゃねぇなら‥
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2020/05/07 22:58
西谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°


『いい加減解放してやれよ』



西谷「…………」


黒尾「……なんも、言わねぇんだな」




上手く返事ができなかった俺を見て、はぁっとため息をついた。



しばらく俺の言葉を待っていたように思えたけど、「もう、いーわ」と突き放すように言って、食堂の方に戻って行った。






『本気で考えられねぇんなら』




……考えてんだ。




考えてるから、こんなにも悩んでんだ。





ちょっと好きかも、とか、そんな軽い気持ちで行って良い相手じゃねぇ。


そのくらいちゃんと、俺でも分かってる。



でも俺を慕ってくれてる今、あなたを手放せずにいるのは事実だ。




端からしたら……あなたを好きなやつらからしたら、良い迷惑だよな……。






……でも、それでも一緒にいたいって思うってことは……。





これは、きっと……。





あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°



西谷先輩……遅いなぁ。




一緒に自主練を終えて、先に食べててと言ってトイレに行ったきり。


食べててとは言われたけど、一緒に食べたいし……。



目の前に置いた炒飯を眺めながら、先輩の帰りを待った。





ガガッ



あなた「!せんぱ____」




やっと隣の椅子が動いて、自然と笑顔になった。


横を向いた私の目に飛び込んできたのは、西谷先輩じゃなくて……。




黒尾「悪かったな。お目当ての相手じゃなくて」


あなた「え、黒尾さん……?」



机にお盆を置くと、躊躇なく椅子に腰かけた。




そこ、西谷先輩が座るのに……。


移動しよっかな。



キョロキョロと周りを見渡して、2つ空いているところを探す。




黒尾「「西谷先輩」なら、来ねぇよ」



あなた「_____、?」




なんで、私が西谷先輩のこと待ってるって知ってるの……?



それに……。




あなた「……来るよ。約束してるもん」



先輩は、約束を破るような人じゃない。




黒尾「さー?愛想つかされたんじゃねぇの。なぁそれよりさ~____っ、!?」



あなた「……っ、…………!?」



なんでそんな意地悪言うんだろうと、不機嫌になっているとフワッと視界が暗くなった。



片手で目を覆われて、クイっと後ろに引かれる。



?「……あなた、わり」



……ほら。


やっぱり。





声で分かる。



あなた「西谷先輩……いえっ」




やっぱり、約束を破るような人じゃないもんね。



黒尾𝓈𝒾𝒹𝑒.°




西谷「移動しようぜ」



あなた「……はいっ!」



スッとあなたの盆を持ち上げると、奥の方を指差した。



黒尾「……」


西谷「……」




“本気だから”



そう目で訴えるように、俺を睨んだ。


















あなた、俺は忠告したからな……。

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