あなた「「すき」ぃ……?」
侑「せや」
治「っ、」
あなたはうぅんと少し考えて、首を思いっきり傾げる。
……どっちなんや。
治「あなた、俺やろ?勿論……」
侑「ど阿呆。俺に決もとるわ」
あなたは俺とサムを交互に見て、またうぅんと考え込む。
そして「あ、そっかぁ」とポンと手を叩くと、人差し指を控えめに立てた。
あなた「すきなのはぁ、にしのやせんぱいっ!」
治「……はぁ?」
侑「……誰やそれ」
「にしのやせんぱい」???
もしかしてさっきの電話のやつか?
治「……」
治𝓈𝒾𝒹𝑒.°
分かってはおったけど……。
やっぱりあなたが惚れた男がおるんは腹立つな。
くそ……。
どんなハイスペック野郎やねん。
俺らが落とせんのぉに、それにコイツがこんな言うゆうことは、相当ええ男なんやろな。
軽々しく男に好意寄せるようには思えんし……。
きっと。
きっと、俺とは違って素直なやつなんやろな。
大人で。
常に冷静で。
コイツのことをスッと引っ張っていけるような。
バレーも、しとんかは知らんけどエースなんかな。
身長高うて。
俺みたく食ってばっかの奴とはちゃうんやろな……。
……そやかて、負けるつもりない。
治「せやったら、俺とツム……俺とツムなら、どっちが好きや?」
侑「……!」
コイツには、絶対負けられへん。
バレーも、こいつんことも。
スタートは一緒やったんやから。
あなた「う~ん……」
侑「なんや、余裕あるんかサム」
治「俺はツムみたくガキやないからな」
侑「……なんやて?」
治「すぐそぉ熱くなるとこ、どーにかせぇや?」
侑「サムかて、んな余裕みせとったら俺に全部持ってかれるんやろが」
治「あぁ?」
あなた「むっ…………けんかやめぃっ」
俺の右腕、ツムの左腕を掴んで止めると、そのままグイグイ押された。
侑「ちょ、あなた……危ないやろがっ」
あなた「ここおすわり!」
治「……っ、おわっ」
ソファーに膝ん裏が当たってバランスを崩した俺とツムは、上手いことクッションに着地した。
あなた「わたしが……わたしがすきなのは……」
治「……」
侑「…………っ」
すぐ隣で、ツムの喉が動いたのが分かった。
ゴクンっ、と、音を鳴らしてあなたの次の言葉を待つ。
フワッ
治「!!?」
侑「っ!?」
あなたは次の言葉を発する前に、俺とツムの丁度真ん中に飛び込んだ。
侑「ちょ、大丈夫か……」
一瞬倒れ込んだんかと心配した俺らに、あなたは頭を上げて「えへへ」とはにかんだ。
あなた「どっちもだいすきぃ~っ」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!