北「返事、聞かせてくれるか……?」
返事……。
あなた「あの私、でも、失恋した、けど……まだ」
まだ、まだずっと、好きなんだ……。
簡単に諦められるような気持ちじゃない。
北「……それでもええよ」
あなた「……え?」
北「俺のこと、ほんのちょっとでも気持ちにあるんなら……試しに付き合ってみん?」
試しに…………。
あなた「……」
目を合わせれない。
何て答えればいいんだろうか。
北さんのことがちょっとでも気持ちにあるか……?
こうして手を握られて、好きだと言われて、名前を呼ばれて……気持ちが揺るがなかったって言えば嘘になる。
西谷先輩のこと、諦めないといけないなら……。
今ここで、北さんの気持ちに応えることが最善じゃないの……?
あなた「_____、」
俯いて考えて、目を合わせようと顔をあげた瞬間、私と北さんの手を離すように割って入ってきたのが1人_____。
治「ストップや」
あなた「っ、治……!?」
北「……なんや」
立ち上がって、治と対面する。
治「「なんや」……って、邪魔しぃ来たに決まってるやないですか」
なにやら怒ったような反応に戸惑った私は、相変わらずの冷静さを醸し出している北さんに少し安心した。
_____のも、つかの間。
北「自分で「邪魔」言うてもうてるやん。今俺とあなたで話しとんねや。どっか行き」
うぉうぉぅぉぅ!
すんごいけんか腰なんだけど……?
治「北さんかて後ろめたい気持ちあるからそうやって俺追い払おうとするんやないんですか?」
どうしてそんな言い方するの……!?
北「なら居ってもええよ?あなた、返事聞かせてや……?」
あなた「ぇ……!?」
いや、流石に……。
あなた「……~っ、侑!!侑、そろそろ自由時間じゃない?い、行こうよ!」
北さんには申し訳ないけど……治が来たことによって女子の目線が痛いの……。
北「せや。俺投票用紙出さなあかんねん。取りに行くけぇ先行っといてくれへん?」
治「ええですよ~」
部室の方に歩いていった北さんを見送って、治と倫くんと一緒に侑のクラスに向かった。
治「ほんま……油断も隙もあらへんわぁ」
角名「なにかあったの?」
あなた「……//」
北さんの告白を思い出して顔を赤くした私を見て、治が慌てた様子で肩を揺さぶってきた。
治「自分っ、まさかOKするとか言わへんよな……!?」
あなた「うっ…………さいなぁ私の勝手じゃん!」
頭がグルグルするので思いっきり突き放したところで、倫くんがなだめに入ってくれた。
角名「とりあえず、侑んとこ行こう」
あなた「うん……ごめん」
教室を覗いて、こっちに気がついた侑がクラスメートに声をかけている間廊下で待機した。
すぐに北さんが追い付いて、手に持った紙を廊下の箱に入れている。
あなた「それ、投票用紙ですか?」
北「せやで。展示の優勝決めんねん」
生徒が投票するんだ……。
アルミ製の箱の蓋には1センチほどの太さの穴が開いていて南京錠がかけられている。
厳重だな……。
侑「よぉお待た~」
治「自分なんで軍服のまんまやねん」
侑が廊下に出てきた瞬間女の子の視線が集中する。
侑は帽子をとり、身にまとった軍服をひらつかせている。
侑「ええやんええやん。……3人はあなたとよぉ回ったんやなぁ?」
不適な笑みを浮かべる侑に、嫌な予感がした。
治「俺はまだまだ回り足りんわ。北さんは満喫したみたいやけどな?」
北「ぁん?」
侑「ほーん……?……あなた、手ぇ出し?」
あなた「……手?」
何かくれるのかな……?
スッと前に出した左手を掴むと、ニヤッと笑う。
カシャンッ…………
あなた「っ、!!!?」
肌に触れた冷たい感触と少しの痛み、そして手首に装着された枷____。
っ、手錠……!?
馴れた手つきでもう片方の輪を自身の右手首にかける。
侑「____捕獲完了やな」
あなた「なっ……」
治「ツム、自分なんしてんねん!」
北「趣味悪いで。はよ外しや____」
駆け寄ってきた皆に微笑を浮かべると、空いた手に持っていた鍵をすぐ横の投票箱に入れ込んだ。
治「あぁーー!?なんしてんねん!」
侑「あなた……こっからは俺と回りや」
あなた「……え」
軍服のせいか、服従しないとと思わせるような口振りと2人の手を繋ぐ無機質な手錠がこの状況の深刻さを教えてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!