【割愛気味でいきます】
2セット目はスターティングから賢太郎くんが入って、なかなか荒々しい展開が続いた。
賢太郎くんの超インナーは、点が入るにしてもミスも目立って一進一退。
途中で菅原先輩と月島くんがピンサで交代し、ツーセッター体制に。
カゲくんのストレートも決まり、点差は詰まる。
青城が先に20点台にのり、こちらのタイムアウトが入った。
冴子「もしこのセット落としても、烏野は先に1セット取ってるし、次取れば大丈夫大丈夫〜っ、」
嶋田「いや……このセット、意地でも取った方がいい。取らないと、やばい気がする_____」
嶋田さんの言葉に、胸騒ぎ。
このまま2セット目を烏野に取ってほしいのは勿論だけど、でも……。
あなた「……賢太郎くんは」
滝ノ上「??」
あなた「あの16番……所謂スロースターターなんです。私の知っているのは昨年の賢太郎くんだけど、でももし、もし青城が……賢太郎くんを入れることについて完成し切れていなかったんだとしたら_____」
嶋田「まさか……仕上げる為にあんなにトスを……?」
あなた「分からないけど……でも」
この胸騒ぎは、多分そういうこと。
それを直後のサーブで確信した。
18対23。
日向のスパイクで19点、そして笛が鳴った。
谷地「山口くん……!」
……山口くん。
和久南戦が終わってから、トイレに行くと走っていった山口くんを見て、月島くんが何があったのかを教えてくれた。
今の山口くんにとって、あのサーブは唯一皆と肩を並べて進める武器だ。
だからこそ、磨いて、研ぎ澄ませて、折ってはならない。
嶋田「忠_____」
谷地「山口くん、大丈夫かな」
あなた「大丈夫だよ……。あの目は、大丈夫」
徹くんと、おんなじ目してる……。
ピッ
笛が鳴って、山口くんは一つ、しっかりと深呼吸をした。
ゆっくりと助走し、放たれたボールは……。
コートの後方へ。
「アウトっ!」
リベロがジャッジして見送ったボールは、確かにそのままの軌道だとアウトだったけど……。
スッと変化して、ライン際に吸い込まれるように落ちた。
_________ピッ
山口「〜っ、おっしゃぁあぁ!!!!」
「「「「うおおぉぉぉぉぁ!!!」」」」
あなた「〜っ山口くんナイッサーブ!!!!」
前回……青城に負けた時、あの時もチームのピンチに任されて、同じような状況で……。
でも、違った。
明らかに違う、芯のあるサーブが私たちを魅了した。
小さく、嶋田さんが渾身のガッツポーズをしたのが分かった。
あなた「もういっぽーーーん!!」
ピッ
放たれたボールは前に落ちかけ、伸びて賢太郎くんの肩に弾かれ落ちる。
ピッ
2連続得点……!
次のサーブは、花巻くんにオーバーで捕らえられてお兄ちゃんのスパイクに繋がれる。
山口くんは体に当て、こぼれたボールを影山くんがカバー。
月島くんが巧みにボールを操り、点を決める。
あなた「っナイス月島くん!」
山口くんのために頑張ったんだね、って言ったら怒られるかな……?
向こうのタイムアウト明け、山口くんのサーブはネットインで入り、4連続得点に。
23対23……。
谷地「これで……同点っ」
旭先輩のスパイクで、烏野のマッチポイント。
あなた「……」
途端に、怖くなった。
言いようのない気持ちが胸の中で渦になって、飲み込まれる。
あと一点。
取ったら、烏野は勝てる。
取られたら、青城は負ける。
負ける……。
『俺の望みは、それだけだから_____』
『俺たちのバレーを_____』
お兄ちゃんに、徹くんに、負けて欲しくない。
山口くんのサーブは白帯ギリギリを通り、リベロが上がる。
Aパスで渡ったボールを徹くんが上げ、お兄ちゃんが入る。
あなた「お兄ちゃん〜っ!!!」
ドガガッッ‼︎
放たれたボールは月島くんのブロック、山口くんの腕を弾いて後方へ。
デュースが続き、回ってきた徹くんのサーブで青城のセットポイント。
サーブレシーブに旭先輩が加わり、3人体制に。
東峰&澤村&西谷「さっこぉぉぉぉい!!」
あなた「1本集中ーー!!!」
青城「「「ナイッサー!!」」」
あなた「ナイッサー!!」
ドゴゴォッ
強烈に放たれたボールを澤村先輩がなんとか上げて、金田一が叩き落としたのを田中先輩が上げる。
旭先輩のスパイクを花巻くんがレシーブし、賢太郎くんが飛び出す。
!月島くん反応が遅れたっ。
あなた「お兄ちゃん……!!!」
岩泉「おらぁぁぁっ!!!」
ドゴゴッ!!
お兄ちゃんのバックアタックが烏野コートに突き刺さり、26対28。
2セット目を取ったのは青城だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!