前の話
一覧へ
黒尾「お、あいつら今日は接戦じゃねぇか」
私からタオルを受け取った黒尾さんがそう言うので見てみると、烏野は生川と23対25で負けていた。
この合宿で確実に皆が成長していることが、チームから離れている私にはとても明確に感じることができた。
黒尾「あ、そうだお前昨日夜どこ行ってたんだ?」
あなた「え?」
夜……?
あ、そうだ、そういえば夜は……。
黒尾「部屋行ったけど追い返されてよぉ」
あなた「京治先輩と星を見に_____っ、」
まずい。
思い出しついでに口走ってしまったことを後悔した。
黒尾さんは予想通り眉間にシワを寄せると、視線をそらした私の顔を覗きこんだ。
黒尾「赤葦と……、星を見に……はぁ」
大きくため息をついて、私の頬を引っ張った。
あなた「むっ、痛……ぅ、」
ぐにぐにと弄んでから、相変わらずの不適の笑みを浮かべた。
黒尾「昨日できなかった分も……今日はきっちりお仕置きしてやる」
あなた「ひぃぃぃぃっ」
黒尾さんのお仕置きとか想像しただけで鳥肌が……。
黒尾「夜行くから」
あなた「やっ、今日はほんとに……無理」
そうだ。
私は今日西谷先輩との約束がある。
両手をヒラヒラと振ると、再度顔をしかめた。
黒尾「今日は誰、眼鏡くん?赤葦?研磨?……それとも……「西谷先輩」?」
あなた「っ、……言わないもん」
黒尾「……お前、顔に出すぎ」
目をそらした私の頬をもう一度引っ張って、研磨くんに話しかけに言った。
今日も安定の第3体育館。
一通り練習を終えた皆にドリンクを配る。
あなた「日向、どーぞっ」
日向「あざっす!」
リエーフ「俺にもぉ!」
あなた「はいはいっ。京治先輩、どうぞ~」
赤葦「ありがと」
木兎「あなたっ、俺にも寄越せぇ!」
ガシッ
あなた「うわっ、やめて汗臭いですから!」
木兎「え……」
黒尾「あなたー俺にも」
あなた「うぃ」
黒尾「だからなんで俺にはそんななんだよ!」
だって黒尾さん意地悪だし……当然の報いだよ。
あなた「月島くんも!はいっ」
月島「……ども」
あなた「…………?」
受け取ってくれたので手を離そうとすると、ボトルが簡単に手から落ちそうになったので
渡し持ち直した。
何でちゃんと持ってくれないの……?
月島「……今日さ」
黒尾「あー因みに……」
小さい声で何やら言おうとした時、黒尾さんが汗を拭きながら話始めた。
黒尾「スパイカーと1対1の時は基本的に相手の正面じゃなく、利き腕の正面でブロックするといいぞ」
リエーフ「おぉ~」
なるほど。
考えてみればそりゃそうだよね、右利きの選手には左側に着けば良いわけか……。
バレーに関しては純粋に尊敬できるんだけどなぁ……。
月島「あの……」
黒尾「んー?」
月島「一応……僕ら試合になったら敵同士ですよね……?どうしてアドバイスまでしてくれるんですか?」
……あ、確かに。
黒尾さんは間髪いれずに、片手を胸の前に、もう片方を開いて変な笑顔を作った。
黒尾「僕が親切なのは、いつものことです」
日向「……」(°Д°)
月島「…………」(゜_゜)
あなた「……大嘘つきめ」
黒尾「なにもそんな目で見なくても……それから、大嘘つきとか言ったそこのあなた、後で100本サーブな?」
やっぱり嘘つきじゃん……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。