あなた「うわ……外暗い……」
北「気ぃつけや。そこ溝あるで」
なんとか作り終えたカレーだったけど、さて食べようかとした時治が、「福神漬けないと食べれへん」と駄々をこね始めたので買い物に出掛けることにした。
じゃんけんで誰が行くかはすんなりと決まり、北さんと2人で夜道を歩く。
あなた「わっ」
溝に気を付けろと言われたばかりなのに、早速よろけてしまった。
北さんが受け止めてくれて、なんとかはまらずに済む。
あなた「ごめんなさいっ」
北「危なっかしいなぁほんま……」
あなた「お恥ずかしいです……」
北「ん」
あなた「え?」
北さんが私に差し出した手が、電灯の明かりでしっかりと見えた。
北「ほっとくと転ぶやろ。リード代わりや」
あなた「私犬じゃないんですけど……」
苦い顔をすると、「似たようなもんやろ」と笑うので唇を尖らせて反抗した。
あなた「てんとう虫なのか犬なのかどっちですか!」
北「てんとう虫ちゃんは小動物みたいで可愛えぇわ」
からかうように頭を撫でると、少し強引に私の手をとった。
あなた「ちょ……//転びませんからっ」
北「前科持ちがなん言うとんねや」
有無を言わさず繋がれた手が、北さんの手に包み込まれてやっぱり男の人の手だなぁって実感した。
北「そや、連絡先交換せぇへん?」
あなた「連絡先ですか……?」
ようやくこの状況になれてきた矢先に、北さんからの提案。
携帯を取り出そうとポケットに手を伸ばすけど、繋いでいる側に入れてあるので取りづらい。
あなた「あの……手」
北「?あぁ……とったるわ」
あなた「ふぇ、ちょ…」
手をほどいてって言おうと思ったのに……!
北さんは片手で私のポケットを探って、携帯を取り出した。
あなた「ども……」
言いながら電源をつける。
北「電源入れとらんかったん?」
あなた「あは……ちょっと、しつこいセールスマンから電話が……」
徹くんやお兄ちゃん、カゲくんから大量に電話がかかってくるので今日はずっと電源を切っていた。
電源を入れて連絡先を交換し、ついでにLINEを確認した。
あなた「っ、//」
西谷先輩が……迎えに……!?
北「?どないしたん?」
熱くなった顔を北さんから背けると、余計に気にならせてしまった。
あなた「や……なんでも」
帰ったら1番に会えるんだ……!
やばい……死ぬほど嬉しい。
平静を保ちながら返信すると、画面に影がうつった。
北「……何顔赤くしとん?」
あなた「ぇ、ぃゃ……なんでも___!?」
路地の壁に追いやられて、繋いだ手を持ち上げられた。
背中にひんやりとしたコンクリートの感触が伝わる。
携帯を持った手も掴んで、片手で両手を覆われた。
あなた「き、北さん……?」
北「________なんや、ムカつくわ……」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。