真綾「えぇ!?じゃあ、ほんとに別れt____あでっ、」
綾乃「声っ」
4限目の体育で、私達はテニスコートに立っている。
綾乃達に月島くんとの事を話すと真綾が大きな声を上げて綾乃に叩かれた。
さくら「そっかぁ……。なに、すれ違いとか……?」
あなた「ん〜…………いや、むしろ向き合えた……かな」
さくら「??」
詳しい事はまた今度話すという事になり、アップが終わって男女ペアで順繰りに試合をしていく事になった。
さて……誰と組もうか。
今までは当たり前みたいに月島くんとペアになってたけど……そうもいかないよね?
……いかないのか?
"今まで通り"ってさ……だって付き合ってない時もペア組んだりしてたし。
分かんないなぁ……線引き。
?「ねっ」
あなた「はい?」
ラケットをポンポン手に跳ねさせて周囲の状況を見ていると、後ろから声をかけられた。
?「岩泉さんっ。俺とペア組もうよ〜」
あなた「…………」
あ……この人、うちのクラスで未成年の主張やった人だ。
確かあれだよね……。
あなた「……あ、カマキリの人!」
?「ひっどい覚え方!坂口弘義だよ!!」
クラスの男の子の名前、あんまり覚えてないからなぁ。
坂口くんか。
あなた「ごめんごめん、主張が印象的過ぎてっ」
坂口「いいけどさぁ〜」
小麦色の肌から、白い歯がニカっと出た。
そして、ふんっと胸を張る。
坂口「1年4組〜っ、坂口弘義!俺は、カマキリが嫌いです!!」
あなた「ぶふっ」
突然始まった主張リトライに、クラスの視線が集まった。
坂口「なのに!!最近面白がってコウキ達がカマキリを持ってくる!!!」
コウキ「ぶはっ、またやってんの!?弘義!」
「いいぞやれやれ〜っ」
坂口「コウキぃぃぃ!!俺に、カマキリ持ってくんなぁぁぁぁ!!!!________ってやつね!」
文化祭の時みたいに声を張って、周囲の拍手と歓声を一心に受けながら私に笑いかけた。
坂口「んじゃ、俺とペア組んでくれる?」
あなた「あ、えっと…………」
……そういえば、月島くんは誰とペア組むんだろうか。
ふと探してみると、女子に囲まれていた。
「月島くんっ。今日はあなたちゃんと組まないの〜?」
「私と組もうよ!テニス部だからっ」
「あ!ずる〜い!」
……困りはしなさそうだな。
まぁ月島くんモテるもんね。
今までは私がいつも一緒に居たから女の子達も気を遣ってただけで…………。
坂口「岩泉さん?」
あなた「…………」
"今まで通り"って……さ。
女の子達に囲まれて眉間にシワを寄せていた月島くんと、目が合った。
何か言いかけたように口を開けて、すぐにグッと閉じて目を逸らす。
あなた「_________ごめん、坂口くん」
坂口「え?」
あなた「今度組もう!」
坂口「え、ちょっと!!」
頭を下げて、集団ができている所に駆け寄った。
月島くんは、私が嫌いになったから別れたんじゃない。
"ちゃんと"付き合えるように……ってことは、私から離れていく方が傷付けるんじゃないか。
期待させるとか、そういうのじゃなくて。
ただ私が、月島くんと組みたいからって理由で組んじゃダメなんて、誰が決めた……?
あなた「月島くん!」
月島「っ、」
ぴょんっと飛び跳ねて自己主張すると、すぐに気が付いてくれた。
女の子達の目線が集まって、怖いけどもう決めたんだ。
あなた「ペア……組もう!」
月島「〜……………、」
「なんだ、結局あなたちゃんかぁ」
「ワンチャンあるって思ったんだけど……しょうがないよねっ」
「お〜いカマキリ弘義!組んであげるよ!」
坂口「上から目線か!!!あとカマキリ言うな!」
思ったより何事もなく去っていってくれて、なんだか拍子抜けした。
あなた「あ、ごめん……よかったら、組まない?」
月島くんがもし、嫌な顔したらすぐにやめようと思ったんだ。
でも……。
月島「……組む」
愛想無しにそう言って返されるのは、嫌がってないということ。
月島くんは嫌だったら、すぐに顔に出るから。
あなた「へへっ……やるからには優勝だよ!」
そう言って笑いかけると、今度は心底嫌そうな顔をしたので、失笑してしまった。
・
真綾「大体分かったよ……別れた理由」
綾乃「まぁ、テニスの様子見る限り心配なさそうだね」
教室で着替えながら綾乃達と話し、かいた汗をシートで拭った。
あなた「あは……」
とりあえず、ちゃんと話す事ができたし。
よかったぁ……。
ドタタタタッ、
あなた「!!!?」
ガタンッ、‼︎
さくら「びっっくりした……!」
いち早く着替え終わった人達が廊下に出てすぐ物凄い形相で戻ってきたので、なんだなんだと大騒ぎ。
真綾「何、虫?」
「違う違う違う違う!!体育後にそれはキツいって!」
……どういう事?
何故か手鏡を出して髪を整え、リップを塗り始めたその子達の頬は体育後にしても赤すぎる。
何事……?
バタンッ!!‼︎
さくら「________やばい」
「でしょ!?」
様子を見に行ったさくらが、開けた扉を思いっきり閉めた。
綾乃「やばいって何……?」
さくら「あのねあのねあのね、こっち見てね、「あっ、来たっ」って感じで顔明るくするの!!!私が待ち合わせしてる気分に浸れるの!!今のうちだよ皆!!!」
真綾「ちょっと落ち着いて!!何、誰かいるの?」
さくらは赤らめた頬を手で仰いでコクコクと頷いた。
あなた「……?」
ウキウキの女の子達が覗きに行ったので、私も汗拭きシートを捨ててから廊下を覗いた。
窓の方に寄りかかって外を見ていたその人は、気が付いてこちらを向く。
瞬間前にいる女の子達がゴクりと息を飲んだのが分かった。
菅原「あなたっ。弁当食べよ〜」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。