あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
4セット目。
トータルディフェンスが完成してきて、日向の囮も充分に機能している。
点の取り合いが続き、7対7。
ここら辺で離しておきたいとこだけど……。
シンクロ攻撃で攻める烏野、トスは旭先輩に上がった。
ドゴッ、……ポンッ……、
綺麗に決まっていたはずの攻撃は、川西さんによってドシャットを喰らってしまった。
谷地「シンクロ攻撃が……止められた」
あなた「……今、澤村先輩が崩れてたから」
滝ノ上「あぁ。ライト側の可能性を瞬時に切り捨てたんだな」
嶋田「ライトの攻撃の可能性がゼロだったわけじゃないけど、強引にライトにくる可能性は低い……」
あなた「状況判断力なら、白鳥沢でトップクラスだと思う……川西さんは」
滝ノ上「リードとコミット使い分けってしな」
?「昔から、そんくらい考えてくれりゃあな」
声方から声がして、皆振り向いた。
あなた「!!?」
滝ノ上&嶋田&明光「ちわぁっす!!」
あなた「こんにちは!」
4人で一気に頭を下げると、恐る恐る顔を上げた私をチラッと見てフッと笑った。
烏養監督「よっこらせ……相変わらず、いい面子揃えてんなぁ鷲匠先生」
ベンチに座って、腕を組んだ。
背後に座らないで……集中が……。
烏養監督「んで、さっきチラッと見たが……佐渡が来てんなぁ」
あなた「あ……はい。私も挨拶しました」
全日本代表チームアナリストの佐渡さんの話を持ちかけられて、コート脇の席に座って頬杖を付いている背中を見た。
今……どんな事を考えて、試合を見ているんだろう。
若くんのスパイクが、月島くん、旭さんのブロックを打ち抜く。
点取り合戦が続いていき、再度若くんに上がったトス。
三枚ブロックが揃ったものの、田中先輩の手を弾いてボールは遥か後方へ。
一歩下がって待ち構えていた旭先輩がなんとか上げて、澤村先輩が合わせる。
澤村「田中!ラスト!!」
「下がれ下がれ!!」
ドガァァッ!!!
田中「!!?」
全く打つ方向なんて分からなかったはずなのに……。
だからゲスブロックは好きじゃない。
嶋田「あんなどこ飛んでくるか分かんないスパイク、止めんのかよ……!」
あなた「…………」
両手を大きく上げて、白鳥沢スタンドに手を振って。
そしてクルッと回転し、こっちを向いた。
あなた「…………っ、」
いや、うん。
認めるよ?凄いのは……。
けど、試合相手に手振られて返せるわけないでしょうが!
天童「(またフレーメン……www)」
半歩のリードを許し、セット中盤。
日向が前衛に上がってきて、すぐに助走付きのブロックで大平さんのスパイクを止めて見せた。
あなた「すごっ!!日向ナイス〜!!!」
まぁスタミナ的にしんどいだろうから全部あれは無理だろうけど……。
それにしても日向、試合中の咄嗟の動きが群を抜いて凄いんだよなぁ。
日向のブロックもあり20体20。
まさに個と数の戦いだ。
烏野の半歩リードで進んでいき、瀬見さんがピンサで入った。
強烈なジャンプサーブは西谷先輩が上げて、カゲくんが伸びたボールに合わせて跳ぶ。
真横に入ってきていた日向が短いトスを打って、1本で切った。
直後、山口くんがピンサで入り月島くんの1人時間差で点差をつけた。
谷地「ひっ、1人時間差……!?月島くん、あんなのできたの!?」
あなた「〜っ、合宿で、練習〜、してたっ、んだよ……!//」
明光「(めっちゃ悶えてるけどバレるぞおい)」
白鳥沢がタイムアウトを取り、再度山口くんのサーブ。
谷地&あなた「ナイッサー1本!!」
ネットインしたボールは乱れて上がり、若くんが強烈な一発を打ち入れた。
スタミナ妖怪め……。
焦ったのかカゲくんのトスミスが出てきて、月島くんが反対の手でカバーしてセットポイント。
…………まずいな。
滝ノ上さんと嶋田さんも表情が苦しくなっている。
その視線はカゲくんに釘付けで。
肩で息をしているカゲくんは、相当な疲労とストレスを顔に貼り付けていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。