あなた「大丈夫ですかっ!?」
車道に面していない夜の道で人通りが少なく、周りに大人もいない。
駆け寄って意識を確かめると、失ってはいなくて苦しんでいる。
呼吸困難……。
?<もしもし!?もしもし!>
倒れた男性の手から放り出された携帯から、誰かの声。
あなた「もしもし!」
すぐに拾って耳に当てると、慌てた口調で<矢島さんは!?>と聞かれる。
矢島さん、この人のことだろう。
あなた「今倒れて、呼吸困難の状態ですっ、矢島さんは何か持病をお持ちですか!?」
?<持病…………っ、!はい!矢島さんたしか食物アレルギーがっ>
食物アレルギー……。
もしそれが原因なら、保健の授業で習ったあれがあるはず……!
矢島さんの鞄を漁ると、ポーチが入っていて中にそれがあった。
授業を思い出しながら、太股の注射部位に押し付けた。
矢島「~っ、っ、……はぁ、はぁ」
あなた「……よかった」
倒れてすぐに呼んだ救急車はまもなく到着した。
救急隊員「君が電話を?」
あなた「はい、矢島秀俊さん56歳。呼吸困難を伴って意識も朦朧としていました、エピペンを所持していたので先程注射して、呼吸が戻りましたっ。今矢島さんの知り合いの方と電話も繋がってます」
矢島さんの荷物を拾いながら空のエピペンを渡すと、「まだ聞きたいことがあるから一緒に乗ってもらえますか」と聞かれて乗車した。
病院に着いて話も終わり、待合室でさっきの電話の人と落ち合った。
?「どうもありがとうございましたっ。藤原と申します。…………まさか学生さんだったとは」
矢島さんは命に別状はなく、大事をとって今日1日は入院されるそう。
制服の私を見て驚いた顔をした藤原さんは、「もう遅いのでタクシーで帰った方がいい、お金は出しますから」と財布を取り出した。
あなた「いえっ、その……帰るっていうか、今日ホテルがとれなくてそこら辺のネカフェに行こうと思ってたので、平気ですよ」
そう言うと目の色を変えて、「ならもっとダメじゃないか!!」と怒られた。
藤原「参ったな……実は僕も旅行っていうか、セミナーでここに来たからホテルをとってるんだ」
あなた「セミナーって……もしかしてアナリストの?」
藤原「なんでそれを……って、君まさか噂のアナリスト志望の女子高生!?」
噂って……。
あなた「はい、一応……」
藤原「そうか…………っ、そうだ、ここから車で30分くらいの所に僕の親戚の家があるんだ!泊めてもらえるようにお願いするからちょっと待ってて!」
あなた「えっ、申し訳ないです大jy___」
断ろうと手を振ると、もうすでに携帯を操作していた。
なんか、わらしべ長者の気分……。
その後、なんとその親戚さんがOKを出してくれたらしくしかも病院まで迎えに来てくれた。
ライトブルーの軽自動車から出てきたのは、お母さんと同年代くらいの女の人。
?「この子なん?」
藤原「あぁ、すまんな、頼むよ。……あなたちゃん、怪しい人じゃないから大丈夫だからね」
?「なによ怪しいって!ほんま喧しい……全く……。あ、私貴女くらいの子供おるし大丈夫やけんね。安全は保証しますっ」
そう言って荷物をトランクに乗せてくれた。
あなた「……ありがとう、ございます……」
いや、流石に申し訳ないでしょ!!
藤原「じゃあ____」
あなた「あのっ!」
?「なぁに?」
あなた「岩泉あなたといいます。掃除洗濯料理、家事は一通りできるつもりですのでどうか働かせてください!!」
無償で泊めてもらうのは心苦しくて、そう提案すると「私はゆばあばじゃないんやけどねっ」と大笑いして料理を任せてもらえることになった。
車に乗って、藤原さんに挨拶してから発車。
?「あ、そやそや、忘れてた。私の名前は宮優子。よろしくなあなたちゃんっ」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!