第434話

王様の独占欲は少しいびつ
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2022/03/12 00:22
影山𝓈𝒾𝒹𝑒.°



「か、影山くんバイバイっ」


影山「……?ウス」



「〜///やばいほんとに返してくれた!!

だから言ったでしょ?怖い人じゃないって!



なんか、文化祭以来クラスの女子が話しかけてくる事が増えた……気がする。


全員同じ顔に見えるけど多分そう。




斗真「クソッ、影山ばかりが何故モテる……!」


影山「なんの話だ?」


斗真「うっっっざ!!!」




後ろの席の斗真が俺の両肩を掴んで揺さぶった。


意味がわからない。




斗真「しかも岩泉さんと仲良いしNo.46の俺を差し置いて……!

 
影山「……、」




?なんだこれ……。


最近おかしい。


あなたと話したりあなたの話題を聞いたりしたら心臓が痛い。


これってまさか……。










……不整脈ってやつか?




斗真「はぁぁもう、なんでお前はそうやって恵まれてんだよ!!どーせこの後部活で岩泉さんとあんなことやこんな事すんだろ!!」


影山「?なんだそれ」


斗真「なんでもねぇわ!!俺だってなぁ、鉄の掟がなけりゃ今頃____、って、そういえば影山、今日の小テスト合格しなかったもんな?居残りだよな?」




……あ"。




影山「……あれって合格するまでやるんだったか」


斗真「ギャハハハッ!!!ざまぁみやがれ!ほんっと頭悪過g____、」


?「失礼しま〜……す」  




馬鹿にしてきた斗真の声がピタッと止まって、前のドアからは何故かあなたが入ってきた。




影山「あなた、どうしたんだよ」


あなた「「どうしたんだよ」じゃないでしょ。また居残り喰らったの?春高もあるのに……って、あ、ごめん話し中だった?」




斗真をチラッと見て両手を合わせる。




斗真「〜っ、いえ!!岩泉さん今日はとてもよいお天気ですねそれでは失礼します!!」


あなた「え、滅茶苦茶雨降ってるけど……失礼します」    





……なんだあいつ。





あなた「あは、不思議な人だね〜」




走り去っていった斗真の背中を見ながら頰を緩めたあなたに、何故か無性にイラついた。




影山「部活行け。あと俺遅れるって言っといてくれ」


あなた「あ、それならさっき山口くんが伝えるって言ってたよ。私は澤村先輩から頼まれたの」


影山「は?何を」



あなたは俺の前の席の椅子を引くと腰を下ろし、こっちに体を向けた。


俺の手元のグチャグチャの小テストを指差す。



あなた「「早くクリアさせて部活に来させてくれ」って」


影山「……1人でできる」   


あなた「……アメリカ初代大統領の名前は?」


影山「…………オバm____、」


あなた「はいアウトっ」




割と自信のある答えだったのに額をこづかれた。



急に問題だされて答えれるわけねぇだろ。





あなた「ほらもう、終わらせて部活行こ?今日はねぇ、ツーの強化してほしいなって_____」





赤子をあやすかの様な物腰柔らかな笑顔でウキウキ語り始めた。




こいつ……こんな顔他の誰にも見せた事見た事ねぇ。


俺のこと赤ちゃんとでも思ってんのか?ムカつくな。




助け無しに合格できる気もしないし、とりあえず教えてもらうか。















あなた「はぁ〜、あと大問1つで終わりだねっ。頑張ろ!」


影山「……お前のこの頭ん中どうなってんだ?こんな小せぇのに。」


あなた「ふわっ、ちょ……頭掴むなぁ!カゲくんだって頭小さいよ!」


影山「あ"?誰が小せぇって?」


あなた「怒るとか意味不明なんだけど……?ほ〜らちっさ〜い」



あなたの手がスッと伸びてきて、俺の頭を両手で包んだ。



________キュウゥ、




影山「!!おい離せっ」


あなた「え、ごめん……?」


影山「…………/」




なんだこれ……いや、いや、意味分かんねぇ。



俺絶対何かの病気だろ。





影山「…………なぁ」


あなた「ん〜?」


影山「土曜夜間バレー行くけど、また一緒行くか?」


あなた「おおっ!いいn____……あ、ごめん。今週末はその、ダメだった……」




元気に立ち上がって満面の笑みになったと思ったら、申し訳なさそうに表情を暗くさせた。





影山「なんかあんのか?」


あなた「ん?……ん〜……っと、えっとね、」


影山「…………?」




俺は、前にもこんなあなたを見たことがある。



あれは確か____、





影山「……国見の家に泊まる前日も、同じ顔してたよな?」


あなた「え」





ポロっと溢した言葉に過剰に反応してきて、言い表せない妙な不安が俺を襲った。





影山「お前……まさかまた国見と____、」


あなた「や!!英は違うよ!そうじゃなくて、」





じゃあ……なんだよ。





あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°




カゲくんに……言うべきなのかな?


月島くんと付き合ってるって……でも、なにも今言わなくてもいい事だし、適当に誤魔化して____。





影山「……月島?」


あなた「!!!?」






まさか、まさかカゲくんの口からそんなピンポイントなワードが出ると思わなくて。



何が起こったんだと見開いた目は、私の顔を見て唇をキュッと絞めたカゲくんを捉えた。





影山「…………お前、」



あなた「〜っそ、そろそろ終わる、よね!?私先部活行っとく!!あとは自分でちゃんとするんだよ!」





何故かどうしようもなく、ここから逃げ出さないといけないと思った。



正々堂々と、「月島くんと付き合ってるから泊まりに行く」って言えない自分が……訳が分からなくて。




影山「〜っおい待____っ、」




グイッ、





立ち去ろうとした私はカゲくんに手を掴まれて、斜めの方向に引き寄せられたので直ぐ近くにあった机にぶつかった。




あなた「、痛ぅ……」




腰打った……。



手を当てて痛みを抑えようとすると、両側にカゲくんの手が付いた。



机とカゲくんに挟まれて、身動きが取れなくなる。





あなた「え、なに……カゲ、くん?」



影山「…………もう、」







……この、雰囲気。



どこかで____、。






ググッ、




あなた「う……わっ、!」




寄ってきた顔を避けようと引いた体は、あっさりと机に背中を預けて倒れ込んだ。


太ももがカゲくんの両足に挟まれて、腰の横には手が付いて。






"答えなきゃ逃がさない"と、言われている様だ。





言うんだ……言わないと。








あなた「……カゲくん、私月s____、」




ポス……ン、





……。



…………。






あなた「〜っ、!!?///ちょ、」






腹を括って口を開いた私の胸元に、カゲくんの顔が埋まった。





絶対その気はない……ないんだろうけど……当たって、///






あなた「カゲくん……、っ//」





息遣いが、ブラウスを通じて肌に温もりとして伝わる。






影山「…………お前は、」







……思い出した。






カゲくんが、どうしようもない不安に襲われてる時。







あの時、中学3年の……私が英と別れるきっかけとなった日も……カゲくんは壊れそうな顔をして。







でも今、なんで今こんな風になってるの……?










影山「俺のもんだ…………ボゲェ……」







私は今まで、こんな弱々しい「ボゲェ」を聞いた事があっただろうか。






カゲくんは、きっと……多分、薄々気がついてる。






私が誰かと付き合ってるんじゃないかって……だから、自分の側から離れるんじゃないかって。












カゲくんにとって私は……もしかしたら。











影山「俺の事だけ、見とけや……頼む、から」











私が認識してるような存在とは少し、違うのかもしれない。

















ねぇ、カゲくん。





貴方にとって私は……。








友達




理解者




チームメイト




相棒




仲間






そんなのじゃなくて、もっと______、









"トクベツな何か"だったり、するのかな……?











ただ、窓の外で延々振り続ける雨音が、どうしようもない2人のこの空間を埋めるように強く激しくなっていった。

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