やばい……。
息が……できない。
澤村「皆乗ったか~?」
「「おーーっす」」
澤村先輩の呼び掛けに、皆が眠たそうな声で返した。
隣に座る西谷先輩も、それは例外ではなく。
西谷「あなた、窓側じゃなくて平気か?」
あなた「っはい!よよよ余裕ですっ」
噛み噛みになりながら首を振ると、ニカッと笑う。
これ……宮城まで続くのかあ。
心臓もつかな??
まもなくバスが出発し、通路を挟んで隣の山口くんはすぐに眠り始めた。
西谷「そういや、あなたは明後日から部活来れねーんだっけ」
あなた「はい、アナリストの講習があって……」
西谷「偉いなぁ」
それから、自分はまだ進路を考えれていないし尊敬するとか、そういえばバカだから就職するしかねぇわ、とか……バレー以外の話で盛り上がれたことが、私にはとても嬉しかった。
バレー部に居るときしか、こうやって話せないから。
勿論昼休みとかに話しかけにいけばよいのだろうけど、他愛もない話のために他学年の棟に行く勇気が出るはずもない。
“選手”と“マネージャー”。
それは私たちの唯一の繋がりだから。
だから、西谷先輩と同い年の人や、同じクラスの人が羨ましくてしょうがない。
こんな風に、学校でも隣に座れたら……。
あなた「……?先輩、眠いですか?」
目を薄く開けてカクンカクンと頭を揺らしているので尋ねると、ハッと目をかっぴらいた。
西谷「すまんっ。大丈夫だ……!」
あなた「疲れてますよね、寝て大丈夫ですよ……?」
眠たいのを我慢して話してもらうのは流石に申し訳ない。
西谷先輩はブルブルと頭を振って、両手で頬を叩いた。
西谷「折角あなたと話せるのに、寝るのはもったいねぇから……」
あなた「……っ!?」
この人は本当に……思わせ振りというかなんと言うか……。
あなた「いつでも、話せるじゃないですか……」
合宿の時だけじゃなくて、部活でももっと話したいし連絡ももっと取り合いたい。
学校で、お昼休みとかに他愛ない話しとかして時間を一緒に過ごしたい。
もっと我が儘になっていいなら、休みの日に一緒にいたい。
別にどこかに出掛ける必要もない。
ただただ、一緒にいたい。
あなた「私は……先輩の隣に座れてるだけで楽しいですよ……」
西谷「っ、あなた、口がうまいなぁ」
フっと、あまり本気にしてなさそうに笑うので続けて返した。
あなた「ほんとに、私……先輩といられるのが嬉しいんですっ。お話はしたいけど、それは今度でもいいから……休んでください」
西谷先輩は少し考えてから頷くと、足元の鞄からスポーツタオルを取り出して頭に被った。
私も寝ようかと体勢を変えるために腰を浮かせた。
ギュッ……
あなた「っ、!…………~っ西谷、先輩……?」
腰も横についた手が西谷先輩のそれに触れて、瞬間握られた。
西谷「……夢で話せるかと思って」
ふいっと窓の外に顔を向けて、握った手に力を込めた。
あなた「…………」
こんなの……反則でしょ。
心臓がばくばくして、とても寝られたものではないのでそろりと手を離そうとすると、再度ギュッと握られた。
西谷「……離さねぇから」
離してくれないと心臓がもたないんですっ!
何て言葉も出るはずがなく。
自爆覚悟でその手を握り返すと、躊躇しながらも手をゆっくりとスライドさせて指を絡めた。
触れる部分が大きくなって、私の心臓の音もそれに比例した。
……寝られる、かな。
・
・
澤村「もうすぐ着くから周りのやつ起こせよ~」
菅原「ふあぁぁ……月島、山口~。起きろ~」
山口「……ぅ……ん。眠……」
菅原「山口、そっちのやつ起こしてくれ」
山口「はい……って、わっ、」
澤村「どうかしたか……?っ!?」
菅原「こ、こんなに仲良かったっけ?」
澤村「(西谷だからと油断していた……)」
山口「(やばい、頭乗せ合ってるよぅ……ツッキー起こすの後にしとこう……)」
菅原「(って、手、繋いでんのか!?……西谷めぇ……)」
「「「(でもなんか、この2人癒される……)」」」
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合宿編終了です☆
これからも大きなイベント企画しているので(新キャラも続々!!)応援よろしくお願いします!
少し更新速度が落ちてしまいますが、勉強面での都合によりご理解くださいm(__)m
1日1話は更新できるよう頑張りますっ!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。