ペシッ
シュルルッ……
あなた「ぅぅ……」
黒尾「はぁ~い47本目失敗ぃ~」
あなた「この鬼が…………」
まさか本当にサーブ打たされるとは思わなかった。
生川は毎日打ってるらしいけど……こんなの死んじゃうよ……。
壁に寄っ掛かってニヤニヤしている黒尾さんをキッと睨んでから、ボールを手に取った。
もう腕がしんどい……。
日向「あなた!あなたっ!!」
あなた「??」
日向が子犬みたいな笑顔で駆け寄ってきた。
日向「なぁ!俺も打つ!!」
……え?
日向「俺サーブがまだいまいちだからさぁ!それに、1人より2人でやれば早く終わるぞ!」
あなた「な…………」
日向「??」
日向って、ほんとに……。
あなた「っ、日向大好きぃっ!!!」
ギュッッ
日向「ほっ、ほわっ!!?//」
ボールを放り投げて飛び付くと、日向は戸惑ってカチンコチンになってしまった。
リエーフ「う……羨ましい……あなた!俺も!俺も打ってやるぞ!」
座り込んでへばっていたリエーフくんまで駆け寄ってきてくれて、もう涙が……。
あなた「ありがとうリエーフくん!!はいっ、ボール!」
リエーフ「あ、あれ……ギューは?」
あなた「??牛……?」
リエーフ「牛じゃなくて!俺も日向みたいにギューしてくれよ!」
日向みたいにって……。
え。
ハグってこと??
あなた「ま、まぁそれくらいなら……」
日向「っダメ!!」
リエーフくんに近寄ろうとすると、間に両手をバッと広げた日向が入ってきた。
リエーフ「おい日向!」
日向「乱用禁止だ!ダメ絶対!!サーブ打つぞ!」
乱用禁止って……薬物みたいに言わないでよね……。
とりあえず3人でサーブを打って、私がゆっくり8本ほど打つ頃にはもう2人は何十本もを打ってくれていた。
黒尾さんはちょっと不機嫌そうだったけど、とにもかくにもサーブ地獄は幕を閉じた。
日向「今日の晩飯なにかなぁ!」
リエーフ「おかわり何杯できるか勝負しようぜ!」
日向「望むところだっ!」
……またバカやってる…………。
月島「ねぇ」
あなた「んぁ?」
月島くんは落ち着いた目で、しっかりと私を見据えた。
月島「……西谷さんと会うんでしょ?」
あなた「っ、…………うん」
バレていたことには驚いたけど、ここで下手に取り繕ってもしょうがない。
言葉につまりながらも正直に答えると、立ち止まった。
あなた「……月島くん?」
月島「明日」
あなた「?」
月島「明日は、僕と会ってよ」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!