「「「「お誕生日、おめでとう!!」」」」
徹くんに合わせて皆で言った言葉に、お兄ちゃんは目を丸くしている。
岩泉「お前ら……こんなことするキャラだったか?」
筋違った反応に花巻くんが笑い、私の背中をトンっと押した。
花巻「はい。俺からの誕プレ」
…………え、私誕プレ??
お兄ちゃんはこっちをちらっと見て、まぁ主にメイド服を見て目を離し、ものすごい速度で二度見した。
岩泉「っ、あなた……!?お前何やってんだ!」
今気づいたの……?
あなた「え、なんか花巻くんに誘拐されて」
岩泉「その服はなんだよっ!!」
あなた「え、なんか着ろって言われて」
岩泉「それですんなりと着るやつがあるか!」
え、なんかめちゃめちゃ怒られてるんだけど。
及川「まぁまぁっ!可愛いじゃんあなた、よく似合ってるよ~」
軽やかな足取りでこっちに来た徹くんが、顎に手を当ててニヤニヤする。
あなた「やだ目が気持ち悪い」
及川「ひどいなっ!」
岩泉「なんで連れてきたんだよ花巻っ」
花巻「えぇ~それはあなたに聞いてみたら?」
花巻くんが挑発的に笑ってこっちを指差し、思い出した。
あなた「そうだよ!お兄ちゃんが悪いんだから!」
岩泉「はぁ!?なにがだよ!」
あなた「私言ってたよね!?1か月前から!今日は予定開けといてって!お母さんと計画立ててお祝いする準備してたのに今日帰らないとか言うし、朝渡そうとしたプレゼントにも気づいてくれないし!!私怒ってるんだけど!?」
頭に血が登って思いっきり声を張ると、お兄ちゃんの表情がみるみる青ざめていくのが分かった。
岩泉「そういえばそんなこと……わ、悪いあなた!ほんとに……!」
あなた「私すっごい悲しかったんだよ!?分かる!?」
岩泉「はい!すみませんでしたぁ!!!」
ビシッと気をつけをして頭を下げてきて、そういえば私今メイド服なんだと思ったらもうなんだかバカらしくなってきた。
あなた「……誕生日に免じて許す。はい、これプレゼント」
花巻くんが持ってきてくれた鞄に入っていた紙袋を出して手渡した。
昨年は色々忙しくて渡せてなかったから、今年こそはと前々から準備していた。
下げた頭をゆっくりとあげたお兄ちゃんは、少しだけ目を潤ませて両手でそれを受け取った。
岩泉「……あなた、サンキュ、ほんとにごめんな」
あなた「もう、いいから……18歳、おめでとう!」
ニコッと笑うと、安心したように表情を緩ませて、それと同時に徹くん達もプレゼントを渡していく。
その後は皆でご飯を食べて、片付けをして一段落。
あなた「あ、もう夜だし帰らなきゃ」
時計を見ると8時を回っていた。
岩泉「そうだな、送る」
花巻「お前ら何言ってんの?」
家に帰るのにお兄ちゃんに「送る」と言われるのはなんだか不思議だなぁと呑気に考えていると、Wiiをしている花巻くんがポテチを頬張りながら言った。
花巻「あなたもお泊まりするんだよ?」
は?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。