「ほんま目の保養やわぁ」
あなた「分かります分かりますっ」
残念や。
あなたは、違う思たんやけどな。
侑「サム、行くで」
治「……」
「っ、はぁ!?自分可笑しいんちゃうん!」
侑「?」
立ち去ろうとした俺とサムの耳に響いてきたど汚い声に立ち止まる。
あなた「……なにがですか?」
「目の保養やゆぅてんの!」
あなた「知ってますよ?」
「宮ツインズの顔が!!!」
あなた「_____2人のバレーが、ですよね?」
……!
思わず、サムと顔を見合わせた。
サムは、小さな光を見つけたように目を輝かせとった。
多分それは俺もおんなじで。
「バレーが目の保養って意味わからんねんけど!」
あなた「あんな高密度なコンビネーション私見たことないですもん!やっぱり双子ってすごいなぁ……。それにセッターとアタッカーとか……侑さんスパイクもよく打てそうだし治さんとスイッチとかしたら絶対面白いことなるし……あっ、ちょこっとくらいなら審判の目ぇ誤魔化せるんじゃ……って、あの2人髪の色違ったかぁ、あ、それに背番号が______」
「ちょっ、黙りや!!!」
急に悠長にペラペラ喋り始めよった。
女が慌てて止めとったけど、俺もサムもあなたに視線が釘付けになった。
「バレーなんかどうでもええねん、宮ツインズ拝めたらええねん!"宮ツインズがバレーしとるけ"かっこええねんから!」
あなた「??バレーをしてる人は皆カッコいいですよ?」
……あぁ、こいつ。
「それを綺麗事っちゅーねん!ほんま好かんわぁ自分みたいなやつ!」
歩み寄ってあなたの胸ぐらを掴む。
侑「っ、」
流石にいかな。
治「待ちぃ」
足を踏み出した俺を、サムが止めた。
侑「……?」
あなたは、胸ぐら掴まれたまんま抵抗なしに黙っとる。
なんか言い返せぇや、それか抵抗せぇや。
あなた「……」
「うちらは"バレーの才能がある宮ツインズ"が好きやねん!!バレーが好きとちゃうねん!」
……なんや、それ。
ほんま……ムカつくわぁ。
バレーは副産物なんかやない。
俺らんとってバレーは……。
あなた「…………えぇ加減にしぃや」
「っ!?」
低い声でそう言ったあなたは、胸元にある腕を掴んで無理矢理離させた。
あなた「イケメン見たいんならスマホで検索せぇ!なんぼでも出てくるわ!!バレーやっとる人馬鹿にすんな!副産物……?自分等みたいななんの目標も持ってないやつに、"生き甲斐"や思うて頑張っとる人の気持ちが分かるわけない!!知ったような口効いて練習観にくんなや邪魔でしかないわ!」
「いっ、痛……」
あなた「あの2人は……」
侑「……」
治「…………」
あなた「あの2人は、才能だけじゃない!バレーが大好きやから努力しとるって、最近知り合ったばっかの私なんかが分かることなのに、なんで同じ学校の、今まで見てきたあんたらが気がつけてないん!?好き好き、かっこええゆーて、そんな表面上の歓声なんかいらんねんっ!!!」
「っ、……」
「行こ、」
タッタッタッ……
あなた「ちょ、逃げんなや腰抜けぇ!!」
……あかん。
治「…………~っ」
俺も、多分サムも、今誰かに見られたらあかん。
ごっつ情けない顔しとるわ……。
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方言ってうつるよね、((ボソッ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。