日向「やべぇやべぇ~っ……夜中に出発するのってワクワクするっ」
田中「前回お前ら遅刻だったもんなぁ」
……眠い。
立ったまま寝れるレベルで眠い。
武田「今回も、早朝に向こうに到着予定です。運転は、僕と烏養くんが交代で行います」
うん、バスで寝よう。
私、単細胞じゃないけどどこでも寝れるよ。
乗車してから前と同じ位置に座った。
荷物を足の下において、タオルを被って眠りにつこうとする。
菅原「ほらそこっ、早く座れよ~詰まってるぞ」
菅原先輩の言葉に重たい瞼をこじ開けると、私の席の通路側で何やらもめている。
影山「なにお前当然のようにあなたの隣座ろうとしてんだよ」
月島「えぇ?キミに関係ある?」
澤村「ほらもう座れっ!取り合いするならお前ら一緒に座ってろ」
月島「絶対嫌です」
影山「こっちの台詞だ!!」
あぁもう……寝させろこの野郎。
田中「そ、そんなもめるなら俺が席変わってやろうか!」
影山&月島「結構です」
田中「あ、さーせん……」
また言い合いを始めた。
菅原「あぁもうっ、あなたに決めてもらえ!」
えぇ……究極の選択じゃない?
影山「あなた、俺だろ?」
月島「こんな単細胞と座れたもんじゃないよね?」
自信満々のカゲくんと、不機嫌そうな月島くんを交互に見た。
あなた「…………月島くんかな」
影山「!?」
烏野「っ!!!!?」
菅原「てっきり影山にするもんだと……」
澤村「俺もだ……」
ん?なんか変な空気……って、カゲくんそんな涙目にならんでも……。
あなた「だってカゲくん寝相悪いしイビキうるさいし寝言言うし歯軋りするしうるさいもん」
影山「ぅぐぅっ……」
山口「影山息してません!!」
菅原「いいやもう適当に座らせとけ~」
澤村「とっとと座れよ~」
皆案外辛辣だった。
月島「____________ねぇ」
バスが出発して少ししてから、月島くんがボソッと口を開いた。
あなた「……………………」
あと少しで眠りにつけるところだったのに……。
窓にもたれたまま、寝た振りを続けることにした。
どうせ大した用事でもないでしょ……。
サラッ
朦朧とする意識の中で、髪が耳にかけられたことがなんとか分かった。
ひんやりとした指が耳に当たり、顔をしかめてしまった。
月島「……起きてるでしょ」
あなた「………………………………」
ワタシハネテル。
ワタシハネテル……。
フゥー……
あなた「…………____っ、ん」
睡魔に引っ張られていた意識が、耳にかかった息でグンっと引き戻された。
月島「やっぱ起きてた」
あなた「っ……今、なに……を」
月島くん側の耳を庇うように手で隠してそっちを向くと、思ったよりも近くに顔があって仰け反った。
月島「質問があるんだけど」
あなた「……なに」
近づけた顔を離そうとせず、仏頂面で続けた。
月島「なんで王様の寝相とか知ってるわけ?」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!