ギュッ
夜久「こんなに頑張ってくれてるのに謙遜して……なんていい子!」
嬉しいけど……そんな目を潤ませるほど……?
思わずその顔に笑ってしまって、「なに笑ってんだよー」と小突かれた。
黒尾さんは、またなにか言おうとしたけど諦めたのか去っていった。
まだ、認めてくれてはないもんね……。
がんばるぞ……!
よく知らない高校との練習試合が始まり、形上はあるけど使ってなかったというノートに細かく書いていく。
1セット目は難なくとって、休憩。
タオルとドリンクを配っていると、研磨くんが何やら考え込んでいた。
研磨くんは頭が切れる。
あなた「ね、ねぇ研磨くん……、」
また逃げられてしまうかもしれないと思ったけど、研磨くんは私の顔を見てから、目をそらしながらも話を聞いてくれた。
あなた「これ、1セット目のメモなんだけど……向こうのセッターの傾向が______、」
そして第2セット。
研磨くんは私の言ったことを頭に置いてプレーしてくれているようだった。
現に何点かはそれで点を稼いでいる。
試合を見ているだけでも、分析してプレーに繋げることができる。
球技大会で学んだことだった。
1日はあっという間に終わって、皆が部屋で休憩している間食堂で晩御飯を作った。
1人で何人ものご飯を作るのは大変だったけど、認めさせてやるっていう気持ちが強く働いて頑張れた。
時間内に作り上げることができて、皆が食堂に入ってきた。
夜久「なんっっだめっちゃいい匂いするんだけど!」
犬岡「お腹減りましたねぇ~。」
夜久「あなたちゃんメニューはなに~?」
適当に座りながらキラキラした目で聞かれるので、こっちもテンションが上がる。
長机に並べた鍋5つとお釜1つを見て期待が高まっている。
端の鍋から順に説明していく。
あなた「ええっと……メニューは、回鍋肉チーズタッカルビ丼と……チーズが苦手な方用に普通の回鍋肉。スープはカレー風味のひき肉と茄子の味噌汁か、キャベツと卵のスープか、はるさめスープの中から選べます!」
一気に説明すると、1拍置いておぉっと歓声が起こった。
山本「それぜってぇ美味いやつだっ!」
夜久「それなっ!!楽しみ!」
よかった……家でも好評だったメニューだから、自信はあったけどやっぱりホッとした。
あなた「あ、あと……申し訳ないんですけど、皆さんの食べる量を把握できていないので、並んでついでいってほしいです……、」
そう言うと、快く返事をしてくれて晩御飯タイムが始まった。
研磨「……あなた、」
お盆に乗せたお皿には他の人よりは量が少なく盛られていた。
自分でついでもらってよかった……。
あなた「どうしたの?」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!